恋人や友人、仕事の同僚とのコミュニケーションで、「価値観が違う」と感じ、相手と距離を取ってしまったことはありませんか?人の価値観は誰一人として、同じではありません。
この記事では、そんな「価値観」を決める要因や、恋愛・仕事シーンにおいて価値観の違いが生まれる場面を紹介しつつ、相手とうまくコミュニケーションをとる方法を解説します。
価値観とは何か
相手とコミュニケーションをする上で、価値観が合うかどうかはとても大事ですよね。「あの人とは価値観が合わない」、「お父さんとは価値観が違うんだよね」、「彼とは価値観が合うから、一緒にいて心地いい」など、日常的によく使われる「価値観」という言葉ですが、そもそも「価値観」とはどんなものを指すのでしょうか?
広辞苑より
言葉の意味や定義を知るなら、まずは辞書を引いてみるのが一番!ということで、辞書の定番、広辞苑で「価値観」を調べてみました。広辞苑によると、価値観は次のように定義されています。
「何に価値を認めるかという考え方。善悪・好悪などの価値を判断するとき、その根幹をなす物事の見方。」出典: 広辞苑無料検索
もう少し簡単にいうと、「その人が物事を良い・悪いと考えるときの基準」と言い換えることができるかもしれません。
例えば、仕事中のランチは1,000円以内、女性なら20代半ばまでに結婚すべき、親からもらった体を傷つけるピアスはよくない…など、私たちは成長する過程で、様々な物事に対して自分なりの判断を行うようになります。それが、価値観として形成されていくわけです。
年代、地域で価値観は大きく異なる
価値観の形成に特に大きな影響を与えると考えられるのが、「年代」と「地域」です。
まず、年代=いつ生まれたかによって、その人が経験する社会の動きは大きく異なります。
組織が一丸となって会社や社会の成長を目指していたバブル期以前に比べ、モノがあふれ、デジタル技術の発展によって便利になった現代では、人は組織ではなく個人の幸せを追求するようになりました。こうした社会の変化によって、2世代、3世代間の価値観は大きく異なってしまうわけです。
また、どの地域で生まれ、育ったかということも、価値観を大きく左右します。これは、いわゆる県民性というもので、例えば、茨城県民は「三ぽい(怒りっぽい・忘れっぽい・飽きっぽい)」、長野県民は理屈っぽくて議論が好き、福岡県の筑前は目立ちたがりが多くて、豊前は保守的、山形県民は貯蓄が多くて勤勉な人が多いなどの特徴があると言われています。このように、地域ごとに存在する暗黙のルールや風習が、価値観の形成に影響を与えているのです。
国の文化でも価値観は異なる
地域による価値観の違いを考えると、国の文化による価値観の違いも見えてきます。たとえば、日本の場合、相手の意思や場の調和を尊重し、譲り合いの精神を大切にします。それに対して、アメリカの場合は自由と平等を重んじ、自分の意見をしっかり伝えて議論をすべきという姿勢です。
そのほかにも、日本は「空気を読む」など、明文化されていないルール=暗黙知が成立しているケースが多いのに対して、アメリカははっきりと明文化されたルールを大切にする傾向があります。このように、全く異なる歴史や文化の中で育った人々は、価値観も違って当然なのです。
環境によって価値観は変化していく
生まれた国や地域の違い以外に、育てられた環境も私たちの価値観に影響を与えます。たとえば、活発な意見や質問をするとたくさん褒めてもらえる家庭で育った人は、きっと学校や会社でも活発に意見をするようになるでしょう。一方、何か意見や質問をする度に、面倒だと親や兄弟からあしらわれていた人は、自分の意見を表に出さずに抑え込むようになってしまいます。このように、自分を取り巻く環境と、それをどう受け取るかによって、私たちの価値観は変化してしまうのです。
恋愛で価値観の合う・合わないを感じる7つの瞬間
一緒にいると楽しくて、素敵だなと思って付き合った恋人なのに、一緒に生活をするうちに価値観が合わないと別れてしまった。こんな経験を持つ人は、多いのではないでしょうか?実際に、恋愛における価値観の違いは、次のようなケースで感じやすいようです。
(1)結婚観〜専業主婦か共働きか〜
数ヶ月、数年と、付き合いが長くなればなるほど、やはり「結婚」の二文字は意識してしまいますよね。日本では長らく、「女性は家を守り、男性は働く」という考え方が一般的でした。しかし、最近では家計の問題や女性の社会進出を背景に、共働きをする夫婦も増えています。もちろん、女性がバリバリ働いて男性が主夫となるのも珍しいことではなくなりました。つまり、家庭の理想像が同じかどうかを知る上で大切になるのが、この結婚観ともいえるでしょう。
(2)金銭感覚〜倹約家か浪費家か〜
同棲や結婚、あるいはデートなどでは、お互いの金銭感覚を知ることができます。手持ちにあるお金をすぐに使ってしまうのか、先々のことを考えて支出を抑えようとするのか。「この人と結婚すれば、堅実な家庭を築けるかも」「このまま彼と一緒になっても、破産する危険がありそう」など、その後の付き合い方を考える機会になるでしょう。
浪費家よりも倹約家の方がいい気もしますが、貯蓄にこだわりすぎるあまり、一円単位で節約を強要してくることもあります。そうなると、頼もしさより息苦しさを感じてしまうかもしれませんね。
(3)生活環境〜潔癖や部屋へのこだわり〜
住環境でも、相手と自分の価値観の違いを知ることができます。ホコリ1つ、ゴミ1つない部屋を維持している人もいれば、最低限の掃除で十分という人もいます。ほかにも、寝具だけはいいものを揃えていたり、壁一面が本棚だったり…。家のこだわりにもその人の価値観が表れ、時にはそれが元で衝突してしまうこともあります。
(4)コミュニケーション頻度〜連絡やデートはどれくらいがいい?〜
大切な人との関係づくりに、コミュニケーションは不可欠です。しかし、お互いが適切だと思うコミュニケーション頻度が異なる場合、連絡をとったり、デートに行ったりすることが苦痛に感じてしまう場合もあります。
(5)距離感〜束縛してくる人、放置してくる人〜
相手との時間が何より大切で、合わない日が続くと苦痛を覚える人もいれば、2週間、1ヶ月会わなくても平気という人もいます。お互いに距離の取り方が合えばいいですが、真逆の価値観を持っていると大変です。こうなると、すれ違いが起き、そのまま自然消滅してしまうことも珍しくないでしょう。
(6)仕事や趣味の優先順位や理解できる・できない
仕事、趣味のようにライフスタイルを形成する要素は、価値観の相違が生まれやすいシーンです。趣味には「他人には理解できないけど自分には大切なもの」が、たくさん詰まっています。だからこそ、相手にもその良さをわかってほしいとまでは言わなくても、その趣味を否定してほしくないものです。ですが、相手の趣味がどうしても理解できなかったり、趣味を最優先して相手を二の次にしてしまったりすると、大切な趣味もマイナスの存在になってしまいます。
仕事も同様に、打ち込んで頑張る姿はかっこいいですが、もっとプライベートを優先してほしいという不満につながることもあります。逆にプライベート重視で仕事はそこそこに、という姿を見て、将来に不安を覚えることもあるでしょう。
(7)他人との接し方〜横柄でがさつ?八方美人で内弁慶?
恋人同士のコミュニケーション以外にも、第三者とのやり取りを見て共感・違和感を覚えることも多いです。たとえば、「レストランの店員さんに対して、横柄な態度をとる姿に幻滅した」「友達にはものすごい見栄を張るけど、2人でいるとそっけない」など、人との接し方に関するスタンスの違いが多ければ多いほど、一緒にいることに対するストレスが溜まってしまいます。
仕事・職場で価値観の合う・合わないを感じる5つの瞬間
社会人になると、1日の大半を職場で過ごすことになります。ここでは、同じ会社内の人はもちろん、クライアントや発注先など、さまざまな人と交流することになるでしょう。そこで生まれる価値観の違いはどのようなものなのでしょうか?
(1)優先順位〜利益を優先するか、顧客との関係を優先するか〜
仕事では、どうしても利害関係を無視することができません。従来からの顧客との関係性を大切にした家族的な経営を重視する企業もあれば、事業を成長させるために合理的に利益を追い求める企業もあります。
また、扱っている商材やサービスでも、価値観は大きく変わります。会社全体のスタンスと、自分の重視する価値観が合うどうかは、非常に重要な問題です。
(2)人間関係〜親密さを重視するか、ドライな距離感を保つか〜
生活の中で、一緒に仕事をする仲間との時間を大切にしたいのか、自分の時間を優先したいのかで、職場の関係者とぶつかることもあります。たとえば、終業後に飲み会がある場合、プライベートの時間を優先して飲み会に参加しないと、あまり快く思わない人がいる一方、参加しないことに対して理解を示してくれる人もいるでしょう。
(3)意思決定のスタンス〜経験に基づいたものか、データを重視するか〜
商品の仕入れや新商材の開発、新しい顧客の開拓など、会社ではあらゆる場面で選択が必要になります。その意思決定において、何を重きに置くかにも価値観が関係してくるのです。たとえば、業界で実績を積み重ねてきた自分の経験と知識を大切にする人もいるでしょうし、市場調査などを行なった上で導き出された、客観的なデータをのみを重視する人もいるでしょう。いずれの場合でも、どちらが正解かは結果が出るまでわかりません。
(4)評価制度〜成果を重視するのか、プロセスも考えるべきか〜
会社での出世や昇給、ボーナスの査定に関わる「評価制度」。会社によって、その制度も指標もさまざまです。「売り上げや顧客獲得数など、ハッキリと結果に出たことを評価してほしい!」「いやいや、新規事業や社内の環境整備など、売り上げを生むまでに経たプロセスも考慮すべきだ」など、会社全体の価値観が、評価制度にも表れていると言えます。
(5)人材育成・教育制度〜会社で支援すべきか、個人がやるべきか〜
会社ではさまざまな人材育成・研修制度が用意されています。外部会社でセミナーをしたり、車内で講演をしたりするケースもあるでしょう。会社として、雇った社員を成長させる機会を設けるべきという考え方は、多くの経営者に根付いています。一方で、会社でのセミナーではなく、スキルアップの方向性は自分で決めて、会社でそれをバックアップすべきという考え方も生まれています。
多様な価値観とうまく付き合うための3つの方法
価値観は人や組織、社会によって全く異なります。家族や恋人、親友など近しい関係にある人同士でも、価値観の違いでぶつかることは少なくないでしょう。日常生活の中で、価値観の違いによるトラブル直面した時は、次の3つの方法を試してみてください。
(1)価値観を対立させない
価値観は、どちらが優れているかという視点で見てしまうと、少しでも自分と価値観の異なる人が全て「間違っている」ことになってしまいます。当然のことですが、あらゆる点で正解と言える価値観を持っている人は存在しません。大切なことは、「自分VS恋人」「自分VS上司」のように、価値観の対立関係を作らないことです。むしろ「あなたと私の価値観は違う」という状態があって、当たり前という認識を持つようにしましょう。
(2)お互いの価値観を開示して、いい点・悪い点を理解し合う
価値観は違って当然だという考えに立ったら、お互いに少しずつ、自分の価値観を開示してみます。その上で、「あなたの考え方は面白いけど、ここは直したほうがいいかも」「私の方が正しいと思っていたけど、その価値観は大切にすべきかも」と、お互いの価値観のいい点・悪い点を客観的に比べてみましょう。このステップを踏むことで、次のステップに進みやすくなります。
(3)多様な価値観を認め、お互いに歩み寄りを試みる
多様な価値観に触れていくと、相手の価値観に対して理解が深まります。すると、お互いに価値観を衝突させるのではなく、歩み寄ることができるようになるのです。
それが結果として、大切な人との人間関係を改善するきっかけになるかもしれません。
「価値観」を深く知ることができる5つの名言から
人は昔から価値観の違いを知り、他人とうまく付き合う方法はないか悩んできました。今を生きる有名人、過去の偉人の名言にも、それがよく表れています。彼らの言葉から、異なる価値観を知ることや、自分の価値観を見つめ直す大切さを改めて考えてみましょう。
世界的なミュージシャン、エルヴィス・プレスリーの名言
「価値観とは、指紋に似ている。誰一人として同じ価値観を持った人はいないが、人は行動のすみずみに自分の価値観の痕跡を残す」
価値観の違い、価値観の影響力の強さをよく表した言葉です。「キング・オブ・ロックンロール」も、人と人の違いを意識していたのですね。
イギリスの哲学者、ジョン・スチュアート・ミルの名言
「自分と異なる人間と接することの価値、なじみのない思想や行動様式に出会うことの価値は、どんなに高く評価してもし過ぎることはない」
自分と違う価値観の持ち主と接するときは、緊張するものです。なるべくなら、近しい考えの人だけでいるほうが、安心できるでしょう。しかし、自分にはない新しい価値観と出会うことで、人生をより豊かにすることができるのだと、この名言は教えてくれます。
アメリカのジャーナリスト、ヘレン・ローランドの名言
「彼と幸せでいたいのなら、彼を深く理解し、少しだけ愛すこと。彼女と幸せでいたいなら、彼女を深く愛し、彼女を理解しようとしないこと」
男女の恋愛における考え方を表した名言です。価値観の違いを全て理解するのではなく、時に「そういうものだ」と認識した上で、愛し合うことが大事なのかもしれません。
日本が生んだヒットメーカー、秋元康の名言
「ビジネスパーソンに最も必要なのは、人生観を固めることだと思っています。つまり、自分なりの価値観をはっきりさせること」
皆さんは自分が大切にしている考え方や価値観を、はっきり表現できますか?仕事や人付き合いに悩んでいる人は、まず自分のことを知ることから始めてみてはいかがでしょうか。
仏教指導者、ダライ・ラマ14世の名言
「変化を恐れない気持ちは大切ですが、自分の価値観を失ってはいけません」
相手の価値観を知ることは重要です。しかしそれ以上に、自分の価値観を見失うとすべての言動に迷いが生まれます。相手を尊重しつつ、自分の価値観を守ることも重要だということがわかる一言です。
職場や恋人との人間関係に悩んでいる人は、ノートやペン、スマホを使って日常のさまざまなシーンでメモに取り、まずは「自分が大切にしたい考え方」を探してみましょう。その上で、相手の価値観を知り、歩み寄ることを試してみてください。自分の価値観を見直してみれば、今まで受け入れることができなかった考え方の中に、自分を成長させる新たな発見があるかもしれません。