ダイエットのために有酸素運動をしたいけれど、仕事や勉強、子育てが忙しくて、ジムや公園でジョギング・ランニングする時間がないという方は少なくないでしょう。しかし、やり方のポイントを押さえれば、自宅の中でも有酸素運動は可能です。
この記事では、室内でもカンタンに取り組める有酸素運動をメニュー別に紹介!さらに、運動のバリエーションを増やせるグッズもまとめていますので、参考にしてみてください。
有酸素運動とは何か
厚生労働省が提供する健康情報サイトe-ヘルスネットによると、ランニング、ジョギング、水泳、自転車などの有酸素運動は「酸素を使い体内の糖質・脂質をエネルギー源とする、筋肉への負荷が比較的軽い運動」と定義されています。
(参考:厚生労働省|e-ヘルスネット|エアロビクス / 有酸素性運動)
私たちは運動中、「アデノシン三リン酸(ATP)」という物質が分解される時に生じるエネルギーを活用して筋肉を動かしています。しかし、体内に存在するATPはわずか数十グラム。これでは、3分程度の運動でATPが枯渇してしまうため、体内では常にATP合成が行われています。
そして、このATPを合成する素となるのが、糖質や脂質です。食事によって摂取した糖質や脂質は、体内で分解され、エネルギー源として利用されるほか、いざという時のエネルギー源として肝臓や筋肉に貯蔵されていきます。この時、さらに余った糖質や脂質が体脂肪という形で体内に蓄積されるのです。
(参考:江崎グリコ株式会社|栄養成分百科 栄養成分ナビ|炭水化物・糖質)
運動に必要なエネルギーは、糖質から生成されるグリコーゲンから優先的に消費されていきます。しかし、グリコーゲンは体内に少量しか蓄積することができないため、グリコーゲンだけで長時間の運動はできません。そこで、体は次のエネルギー源として、体脂肪を分解し始めます。体脂肪の分解を行うためには、呼吸によって酸素を取り込む必要があり、これが「有酸素運動は脂肪燃焼に効果がある」と言われる理由になっています。
有酸素運動と無酸素運動の違い
無酸素運動は、相撲やバーベル上げ、短距離走などのように、短時間で強い力を必要とする運動のことで、エネルギー源としては主にブドウ糖やグルコースが利用されます。一方、有酸素運動では、長時間の運動によってブドウ糖やグルコースだけではエネルギーが不足するため、体脂肪が分解されてエネルギー源になります。
つまり、エネルギー源として脂肪を利用するのかしないのかという点が、有酸素運動と無酸素運動との大きな違いです。
(参考:京都産業大学|生き物のエネルギー通貨を生み出すナノモーター 、厚生労働省|e-ヘルスネット|有酸素性エネルギー代謝)
有酸素運動はダイエットに効果はあるのか?
有酸素運動は、長時間継続して行うことで脂肪を分解し、エネルギーとして利用してくれます。そのため、ダイエット効果は非常に高いと考えられています。また、有酸素運動はゆっくりとしたペースで続けられるので、どんな方にもおすすめな運動方法と言えるでしょう。
ただし、有酸素運動は枯渇したグリコーゲンを補うために、脂肪だけでなく筋肉も分解しようとします。筋肉量が落ちれば代謝も低下して、痩せにくい体になるだけでなく、ボディラインにメリハリがなくなってしまいます。
体重を落としながら、適度に筋肉量をアップ・維持させるために、有酸素運動に慣れてきたら無酸素運動である筋トレにも取り組んでいきましょう。
室内の有酸素運動でも痩せることはできるのか
有酸素運動と聞くと、ランニングや水泳など、ある程度スペースが必要な運動だと思う方も多いでしょう。しかし、有酸素運動は自宅などの室内でも十分に行うことができます。「平日は仕事が忙しくてジムに行けない…」という方は、室内の有酸素運動から始めてみてください。
有酸素運動の時間の目安
有酸素運動のダイエット効果をしっかり発揮させるには、どれくらいの時間・頻度で取り組むといいでしょうか。諸説はいろいろありますが、ここでは1つの目安をご紹介します!
有酸素運動をする時間
有酸素運動は、一定時間継続して運動を続けることで、脂肪をエネルギー源として利用し始めまると考えられています。継続時間の目安としては、「20分以上」というものが有名でしたが、最近ではこれを疑問視する研究もあり、5分〜10分の運動でも十分な脂肪燃焼効果があるとも言われているようです。
そのため、運動に慣れていない方は、まず1回10分程度を目安に有酸素運動を続けてみてください。運動を開始して20分経過すると、体脂肪の分解が早まるとも考えられていますので、慣れてきたら強度を調整しつつ、30分〜1時間といった長めの運動にもチャレンジしてみましょう。
有酸素運動をする頻度
有酸素運動の適切な頻度は、運動の強度によって変わります。例えば、1度に30分〜1時間程度でしっかり運動に取り組む場合は、週2〜3回で休息も挟むようにしましょう。一方、1度に10分程度の軽い運動の場合は、毎日取り組むのがおすすめです。
器具がなくてもできる室内の有酸素運動を紹介
いますぐできる室内の有酸素運動を知りたい!という方に、器具なしでも簡単にできる有酸素運動を5種目ピックアップしてご紹介します。最後の種目はかなりハードなので、体力のある方はぜひチャレンジしてみてください。
(※記事内で紹介している運動の回数、セット数などはあくまでも目安です。適切な運動強度には個人差がありますので、ご自身の体調を見極めながら無理のない範囲で行なってください。)
階段昇降(踏み台昇降)
自宅の階段や、段差を活用して行える種目です。
やり方はとてもシンプルで、いつも通り階段を登るだけ。段差を使う場合は、登って降りてを繰り返します。どちらも自分のペースで、テンポよく身体を動かしましょう。段差はひざ下くらいの高さの場所を利用するとひざへの負担を減らすことができます。
この運動を行う時のポイントは2つ。背筋をしっかりのばすことと、脚を大きく動かすことです。また、登る時はかかとも含めて、足裏全体が段差にしっかり乗るよう意識してみてください。
5分〜10分を1セットとして、間に休憩をはさみつつ、3セットを目安に取り組んでみましょう。
もも上げ(ニーアップ)
ダイエットはもちろん、体力づくりにもぴったりなのがこの運動です。
立ったまま、その場で足踏みをするようにももをあげます。腰よりも高い位置までももを持ち上げるイメージで行いましょう。しっかりももを上げることで、股関節周りのインナーマッスルが鍛えられます。また、両腕もしっかり振ることで全身運動にもなるので、おすすめです。
左右交互にももを上げて、連続100回〜200回を目標に頑張ってみてください。
スロースクワット
筋トレの王道でもあるスクワットですが、動作をゆっくり行うことで有酸素運動と同じ効果を得ることができます。まずはスクワットの基本動作をチェックしましょう。
(1)両足は肩幅よりやや広く開き、つま先を少し外へ向けます
(2)両手はまっすぐ前に伸ばすか、胸の前で組みましょう
(3)ももが地面と水平になるまで、ゆっくりとしゃがみます。しゃがむ際には、ももの前の筋肉の動きを意識しましょう。また、膝がつま先の向いている方向より内側に入らないように注意し、顔は傾いた背筋に合わせて前方の床を見るようにしてください
(4)しゃがんだ時の姿勢は、「すねと背筋が平行になっている」ことを意識します。また、かかとやつま先に体重が偏らず、足裏全体で地面を踏むようにしましょう
(5)もも裏とお尻の筋肉を使うイメージで、まっすぐ立ち上がります
スロースクワットでは、このしゃがむ動作と起き上がる動作をそれぞれ10秒くらいかけながら、ゆっくり行うのがポイントです。20回3セットを目安に取り組んでみましょう
さらに、両足を肩幅の1.5倍〜2倍まで広げ行えば、内ももを刺激して脚のシェイプアップにも効果を発揮します。こちらもぜひ挑戦してみてください。
バービージャンプ
(1)両足を肩幅と同じくらいに広げます
(2)その場にしゃがみこみ、両手は地面につきましょう
(3)両手を地面につけたまま小さくジャンプし、両足を後ろへ伸ばして腕立て伏せのような姿勢になります
(4)小さくジャンプし、両足を元の位置に戻します
(5)(4)の姿勢から、膝を伸ばして高くジャンプします。この時、両手は真上に伸ばすようにしましょう
これを10回3セットからはじめ、慣れてきたら30回3セットを目標に取り組んでみましょう。
前後はもちろん、ある程度は天井の高さも必要な種目です。心配な方は真上へジャンプする時、腕を曲げる、ジャンプの高さを調整するなど、動作を工夫してみてください。
バービージャンプは室内で行える有酸素運動の中でも、比較的強度の高いトレーニングです。ある程度、運動に慣れてきてから取り組むようにしてみるといいでしょう。
HIIT(高強度インターバルトレーニング)
最近、書籍などでも紹介されて話題となっているHIIT(ヒット)。日本語では「高強度間欠的運動」とも呼ばれ、短時間で非常に負荷の高いトレーニングを繰り返します。
やり方はシンプルで、20秒間とにかく全力でトレーニングを行い、10秒のインターバルを挟みます。これを1セットとして、合計8セット4分間、これを繰り返すというものです。
トレーニングの種目はバリエーションが多く、例えば、バービージャンプを8セット繰り返すのも良いですし、階段昇降ともも上げを交互に行うというのでも構いません。とにかく、20秒間はできるだけ全力で体を動かすというのがポイントです。
非常にハードなHIITですが、有酸素運動と無酸素運動の2つの効果を同時に得られるというのがポイント。つまり、脂肪燃焼をしつつ、筋トレもできるということです。短時間でできるので、忙しい人にもおすすめの種目です。
室内で有酸素運動ができるおすすめマシンと器具の紹介&解説
室内で気軽にできる有酸素運動ですが、マシンや器具を使うことでさらに運動のバリエーションを増やすことができます。妊婦や高齢者の方でも使いやすいものを選んでみたので、ぜひ試してみてください。
おすすめの有酸素運動マシン・器具
フラフープ
おもちゃのイメージが強いフラフープですが、長時間回し続けようとすると、結構大変な運動になります。そのため、有酸素運動として優秀なのはもちろん、お腹まわりを大きく動かすことで体幹が鍛えられるので、くびれのあるウエストを作るのにも最適です。
エアなわとび
ボクサーも取り入れているなわとびは、有酸素運動として高い効果を発揮します。大きなスペースを必要としないのがメリットですが、縄が床や天井をこする時はどうしても大きな音が出てしまいます。
そこで、ひもを使わずになわとびを行うのがエアなわとびです。音が出ないので、室内でも安心して使うことができ、飛んだ回数をカウントする機能もあるので、「今日は100回跳ぼう」など、目標も立てやすいでしょう。
トランポリン
(www.amazon.co.jp/dp/B07544L546)
十分な天井高があることが前提ですが、トランポリンもおすすめの器具の一つです。短い時間でも高い脂肪燃焼効果を発揮できるだけでなく、楽しくトレーニングをすることができます。折りたたみ式のコンパクトなタイプも販売されているので、意外と場所を取りません。
妊婦さんにおすすめの有酸素運動マシン
ステッパー
ステッパーはその場で足踏みができるマシンです。油圧でステッパーの重さを調整できるタイプは、自分の体力に合わせて負荷を調整することができます。単純な足踏み動作ですが、続けているとうっすら汗をかけるくらいのちょうどいい運動になります。ふくらはぎなど、血流の改善に欠かせない部位を鍛えることもできるので、妊婦さんのコンディション維持にも最適です。
バランスボール
バランスボールはとてもメジャーな運動器具です。日々のトレーニングで活用できるほか、椅子の代わりに座るだけでも、バランスを保とうとすることでインナーマッスルを刺激できます。また、スロースクワットなど、他の有酸素運動の補助に使えるというのもメリットです。
高齢者におすすめの有酸素運動マシン
ステップ台
階段昇降に使えるステップ台です。軽くて簡単に移動させることができるので、好きな場所で気軽に運動できるだけでなく、身長や体力に応じて、高さ調整もできます。さらに、ストレッチにも活用できるので、1つあるといろいろと便利なアイテムです。
エアロバイク
ある程度のスペースがあるなら、スポーツジムにあるようなエアロバイクもおすすめです。同じ有酸素運動であるジョギングと比べて、ひざにかかる負担を軽減することができるだけでなく、高い効果も期待できます。
マンションなど、静かに有酸素運動をしたい場合は
室内の運動で気になるのは、やはり騒音ではないでしょうか。特に、バービージャンプなどは騒音に注意が必要な種目です。快適な生活のためにも、マンションの下の階に住んでいる方に、ジャンプの衝撃音が響いてしまうなどの迷惑は、避けたいところですね。
そこで、運動による騒音の対策として有効なのが「防音マット」。吸音材を使用したマットを使うことで、気になる振動や音をかなり抑えることができるでしょう。
自宅でできる筋トレと組み合わせてより効果的に!部位別おすすめトレーニング
有酸素運動によるダイエット効果の説明でも触れましたが、ダイエットやシェイプアップをしたい方は、有酸素運動に加えて筋トレも行うことで、さらに効果を実感しやすくなります。特に脂肪のたまりやすいお腹まわりや太ももは意識的にトレーニングしたい部分です。
ここでは、部位別におすすめのトレーニングメニューを紹介していますので、参考にしてみてください。
お腹のダイエットメニュー
ドローイン
(1)立った姿勢で手をお腹や背中に置きます
(2)3秒かけて大きく深呼吸をして息を吸います
(3)7秒かけて息を吐きながら、限界までお腹を凹ませます
(4)もう一度、3秒かけて息を吸います。この時、お腹が膨らまないように気をつけましょう
(5)7秒かけて息を吐きながら、先ほどよりもお腹を凹ませるイメージで行います
まずは3回の呼吸からはじめ、慣れてきたら5回、10回と回数を増やしましょう。
ツイストクランチ
(1)仰向けになり手は後頭部で組みます。ひざは軽く曲げておきましょう
(2)体を丸めながら、右ひじと左ひざをくっつけてください
(3)ゆっくりと元に戻し、今度は逆のひじ・ひざをくっつけます
左右交互を10回ずつ、合計2セット行います
お腹周りのトレーニングについては、以下の記事でも詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。
太ももダイエットメニュー
太もものトレーニングメニューといえば、やはりおすすめはスクワットです。両足を肩幅の1.5倍〜2倍まで広げ、各動作を10秒くらいかけてゆっくり行う、ワイドスタンスのスロースクワットで、しっかり下半身を鍛えましょう。
慣れてきた方は、片足をベッドや椅子に乗せて行う「ブルガリアンスクワット」、両足でジャンプしながら行う「ジャンプスクワット」などにもチャレンジしてみるのもおすすめです。
太もも周りのトレーニングについては、以下の記事でも詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。
有酸素運動は、1回あたりの消費カロリーがそれほど大きくはありません。大切なのは、1日5分〜10分でもいいので、運動を続けることにあります。とはいえ、毎日同じ運動だけだと飽きてしまうので、記事内で紹介したメニューを組み合わせながら、楽しみながら運動とダイエットに取り組みましょう。