もしも宝くじが当たったら、何に使おう?なんて夢想してみた経験は、誰にでも一度はあるでしょう。運次第で大金が手に入るかもしれないという夢のような話ですが、もし本当に宝くじが当たったとしたら、それは夢ではなく一気に現実問題となります。また、当選金を受け取るにあたっては、税金を引かれてしまうのでは?などと、手続き的な面も気になり始めることでしょう。
この記事では、宝くじの高額当選金にかかる税金について詳しく解説します。知っておきたい税制度もあわせてご紹介しますので、運よく宝くじが当たった場合に備えて、頭の片隅に入れておきましょう。
宝くじの当選金に税金(所得税)はかかる?
通常、何らかの形で収入を得た場合、その収入に対して所得税がかかります。では、宝くじが当たって当選金を受け取る場合、同じように税金を納める必要があるのでしょうか。結論から言うと、宝くじの当選金には所得税はかかりません。このため、宝くじは当たった金額を全額受け取ることができます。
宝くじの当選金に税金がかからない理由
宝くじに所得税が課されない理由は、宝くじについての決まりを定めた「当せん金付証票法」にあります。この法律の第13条には
当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない出典: 当せん金付証票法 – e-Gov法令検索
と記載されており、宝くじの当選金には所得税がかからないことが、明確に定められているのです。また、当選金は所得として扱われないため、住民税もかかりません。
そもそも、宝くじは自治体の資金調達を目的とするものです。当選者への支払いに使われる賞金は全体の売り上げの半分以下で、そこから経費や広報費を除いた全体の約4割が、収益金として販売元の自治体に納められ、公共事業などに使われています。このように販売価格にはすでに税金に相当する分が含まれているため、当選金には税金が課されないことになっているのです。
当選金は贈与税の課税対象
購入した人が当選金を受け取る限りにおいて税金はかかりませんが、当選金の一部または全部を誰かに譲る場合、その金額は贈与税の課税対象となります。そのため、莫大な税金を納めなけらばならない可能性があることを理解しておきましょう。
贈与税の計算方法
では、実際の贈与税がいったいどれくらいの額になるのかシミュレーションしてみましょう。贈与税は、受け取り人が1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与された財産の合計金額に基づいて算出されます。
まず、贈与された金額の合計から基礎控除110万円を差し引きます。その後、基礎控除後の金額に一定の税率をかけ、その計算結果から控除額を引くことで、納めるべき贈与税の金額を計算することができます。
基礎控除後の課税価格に対する税率と控除額は以下の表の通りです。
(参考:国税庁 贈与税の計算と税率)
例えば、宝くじの当選金から2,000万円を母親に贈与する場合、贈与税の計算は次のようになります。
{(2,000万円 - 110万円) × 50%}- 250万円 = 695万円
2,000万円を譲った場合、695万円を納税しなければいけませんので、実際に母親が使えるのは1,305万円となります。
なお、父母や祖父母から20歳以上の子や孫に贈与を行う場合には、「特例贈与」という扱いになり、税負担が軽減されます。この場合の税率と控除額は次の表のように定められています。ただし、父母や祖父母といっても直系でなければいけませんので、たとえば配偶者の父からの贈与などには適用されません。
(参考:国税庁 贈与税の計算と税率)
例えば、宝くじの当選金から2,000万円を、祖父から20歳を超えている孫に対して贈与する場合、贈与税は次のようになります。
{(2,000万円 - 110万円) × 45%}- 265万円 = 585.5万円
上述のように、子から母へ贈与する場合は「特例贈与」にあたらず、贈与税の額は695万円だったので、同じ2,000万円を贈与する場合でも、贈与する人とされる人の関係が違うだけで、贈与税の額に100万円以上の差が付くことがわかります。
当選金を贈与したいときの税金対策
当選者自身が全額使う場合は税金がかかりませんが、もし当選者自身が使いきれないまま他界してしまえば、通常の現金資産と同じように相続税が課されることになります。そこで、税金を課されずに当選金を贈与するための対策を把握しておきましょう。
贈与税の計算の説明で触れたように、贈与税には110万円の基礎控除があります。これは、1年間に受け取る贈与の額が110万円までであれば、贈与税は課されないということです。
例えば、両親と自分の配偶者に当選金を贈与したい場合、毎年最大110万円ずつであれば贈与税はかかりません。そのため、仮に10年間贈与を続けたとすると、110万円×3人×10年で、合計3,300万円を非課税で贈与できることになります。
ただし、毎年同じ時期に同じ額の贈与を行うと、あらかじめ贈与額が決まっていたものと判断され、一括贈与と同じ取り扱いを受ける場合があります。そのため、贈与する時期や金額には注意しましょう。
宝くじを共同購入したときの税金対策
家族や友人でお金を出し合って宝くじを多数購入し、その中の1枚が当選した場合、当選金の分配には注意が必要です。
この場合、宝くじを共同購入したことになりますが、代表者1人が受け取ってしまうと、共同購入者に分配する行為は「贈与」と見なされ、贈与税が課されてしまいます。これ避けるため、共同購入の場合には購入者全員で当選金の受け取りに行きましょう。
受け取りの際には銀行が「宝くじ当せん証明書」を発行してくれますが、共同購入の場合には、この証明書には1人1人の受け取り額を記載してもらうことができます。そして、この書類があれば、それぞれが宝くじに当選してお金が振り込まれたことが証明されますので、贈与税が課されることなく当選金を分配することができるのです。
もし全員揃って受け取りに行けない場合は、行けない人の署名押印入りの委任状を用意して、必ず購入者全員分の証明書を発行してもらいましょう。
当選金を受け取るときの手続き
宝くじの当選金を受け取るときは、共同購入者がいない場合でも必ず「当せん証明書」を発行してもらいましょう。この証明書は、受け取った大金の出所を示す重要な書類となります。もし受け取り後に税務署から税務調査が入った場合、当せん証明書がなければ、宝くじの当選金であることを証明できず、誰かから贈与を受けたものと見なされて多額の税金を納めることになるかもしれません。
なお、宝くじの当選金は所得税が非課税ですので、確定申告は不要です。申告しないのなら税務署に知られることもないのでは?と思うかもしれませんが、多額の資金が動けば、金融機関から税務署に情報が渡ります。したがって、宝くじで高額の当選金を得た場合、それ以後は自分の資産が常に税務署に監視されていると思っておくのがよいでしょう。
そのため、もし申告なしで高額の贈与を行ってしまえば、税務調査が入って後から多額の贈与税を課されるかもしれません。のちのちトラブルにならないよう、ルールをきちんと把握して、それに則った対策を取りましょう。
海外で購入した宝くじの当選金に税金はかかる?
もう1つ気をつけたいのが、海外で購入した宝くじに当選した場合です。「当せん金付証票法」により当選金が非課税になるのは、あくまでも日本の宝くじに限定されます。そのため、海外旅行や海外出張中に現地の宝くじを購入し、当選した場合の当選金は「一時所得」という扱いになり、所得税が課されることを覚えておきましょう。
一時所得は、その所得を得るために直接支出した金額と最大50万円の特別控除を差し引いた額の半分が課税対象となります。例えば、販売価格300円相当の海外の宝くじで1,000万円相当の当選金を得た場合、課税対象となる一時所得は次のようになります。
(1000万円 - 300円 - 50万円) ÷ 2 = 4,749,850円
この金額をその年のほかの所得と合算して総所得金額を計算し、段階的に定められている税率と控除額によって最終的な所得税の額が決定されます。また、国によっては現地でも税金を課されることがあるため、注意が必要です。
宝くじ以外のギャンブルで得た賞金に税金はかかる?
宝くじ以外で所得税が非課税となるのは、「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」の対象となるサッカーくじtotoなどの払戻金です。同法律の16条では「払戻金については、所得税を課さない」と規定されています。
競馬や競輪、ボートレースなど、サッカーくじ以外のギャンブルについては、具体的に法律での取り決めがありません。したがって、競馬などの払戻金は、海外の宝くじと同様に「一時所得」扱いとなり、所得税が課されることになります。
課税対象となる一時所得が20万円を超える場合、所得を得た年の翌年2~3月に確定申告を行って納税する必要があります。万一、確定申告までの間に全ての払戻金を使いきってしまった場合、多額の税金を自力で捻出しなければならなくなりますので、注意しましょう。
宝くじの当選金には所得税は課されませんが、誰かに分配したい場合には贈与税がかかるというのが最大の注意点です。また、所得税がかからないのは日本の宝くじとtotoだけですので、海外の宝くじや競馬などのギャンブルで大金を手にした場合は、一時所得として多額の所得税を徴収されることも覚えておきましょう。
贈与税と一時所得の所得税のいずれも、実際に納税するのは翌年2月からの確定申告の時期ですので、それまでにうっかりお金を使い果たしてしまわないよう、くれぐれも注意してくださいね。