ビタミンのひとつである葉酸は、身の回りの食品に含まれています。人間が生きていくために必要な栄養素であるため、とくに妊娠中の女性は「葉酸を摂取しよう」といわれることもあるでしょう。
この記事では葉酸の効果や必要摂取量、効率的に摂取するためにおすすめの食品などをご紹介します。
葉酸とは
葉酸は水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB12とともに赤血球を生成するはたらきを持っています。植物の葉に多く含まれていることから「葉酸」と名付けられましたが、レバーなど野菜以外の食品からも摂取することができます。
葉酸は体内の代謝にも関わっており、たんぱく質や細胞の生成に必要なDNAといった核酸の合成をうながします。とくに身体の発達に関与するため、胎児の発育に欠かせません。
ただし、熱に弱く水に溶けやすいため、食事から摂取する場合は調理に工夫が必要です。おすすめの食品や食べ方は後述します。
葉酸の効果
葉酸が不足すると、悪性の貧血である「巨赤芽球性貧血」を引き起こしたり、動脈硬化につながったりすると考えられています。葉酸の代表的な効果をいくつか見てみましょう。
妊活中・妊娠中のリスク軽減
葉酸は胎児の発育に欠かせない栄養素です。妊活中や妊娠中は、葉酸の必要量が通常時の約1.8倍にまで増えるため、とくに多く摂ることが推奨されています。
葉酸が胎児に行きわたると細胞分裂が活発になり発育がうながされるほか、先天異常である「神経管閉鎖障害」のリスクを軽減できるとされています。胎児の先天異常は妊娠7週間頃までに起こると考えられているため、妊活中の方は妊娠1ヵ月以上前から葉酸を多めに摂取するのがよいでしょう。
うつ病の予防
神経伝達物質であるカテルコールアミンにはドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの3種類があり、これらが不足すると意欲の低下や抑うつ状態を招いてしまうとされています。葉酸は、このカテコールアミンの生成に関わる栄養素であるため葉酸をはじめとした栄養素をしっかり摂取することで、うつ病を予防する効果が期待できるでしょう。中には食生活の改善によってうつ病の治療を進める診療所もあります。
貧血リスクの軽減
葉酸は、ビタミンB12と同じく赤血球の生産を助けビタミンのため、しっかり摂取しておくことで軽減や動悸、息切れ、疲労感などを招く巨赤芽球性貧血の予防や貧血リスクを軽減する効果が期待できます。
とくに成長期の子どもは1日に必要とする葉酸の量が多く貧血になる可能性が高いと考えられているため、十分な量の葉酸を摂取するようにしましょう。
1日に必要な葉酸摂取量
人間は1日にどれくらいの葉酸を必要としているのでしょうか。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(※)をもとに、推奨されている葉酸の摂取量を確認してみましょう。
(※参考:厚生労働省│日本人の食事摂取基準(2020年版))
成人男性
成人男性に推奨されている葉酸の量は1日に240µgです。食品から摂取する葉酸の吸収率は加齢の影響を受けないと考えられているため、65歳以上でも1日に240µgの葉酸が必要になります。
成人女性
成人女性も成人男性と同じく1日に240µgの葉酸を摂取することが推奨されています。また、65歳以上でも必要量に変わりはありません。
妊婦
妊婦の場合、1日に推奨されている葉酸の摂取量は400µgです。胎児の神経管閉鎖障害を予防するためにも、とくに妊娠前や妊娠初期はサプリメントなどで葉酸を十分に摂取する必要があります。
葉酸を取りすぎたときの影響
食品から葉酸を摂取している場合、過剰摂取による健康障害は報告されていません。
しかし、サプリメントなどから摂取しすぎた場合は身体に悪影響を与えるおそれもあるため、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、最低健康障害発現量を5mgと定めて過度な摂取を避けるよう推奨しています。さらに安全性を考えると、サプリメントから摂取するときの上限は1日1mgまでが望ましいでしょう。
ただし、葉酸は水溶性ビタミンのため、必要以上に摂取した場合は尿や汗などとともに体外に排出されます。また、加熱すると減っていくため、過剰摂取にはなりにくい栄養素だといもいえます。
葉酸を多く含む食品
葉酸は、野菜に限らず、さまざまな食品に含まれています。毎日の食事から効率よく摂取できるよう、葉酸を多く含む食品を把握しておきましょう。
海藻
葉酸を多く含む食品としては、海苔などの海藻が挙げられます。
文部科学省の食品成分データベース(※)によると、焼き海苔100gあたりの葉酸は1,900µg。焼き海苔1枚あたりが約2gだとした場合、1枚で約38µgの葉酸が摂取できます。海苔は調理の必要がなく、そのまま食べることができるので葉酸を効率よく摂取できるでしょう。
また、素戻しした乾燥わかめには100g当たり440µgの葉酸が含まれていますが、過熱しすぎると葉酸が失われてしまうため、料理の仕上げ直前に加えるようにしてください。葉酸は水溶性ビタミンのため、みそ汁のように水分も一緒に摂取できるメニューがおすすめです。
(※参考:文部科学省│食品成分データベース)
野菜
小松菜、ほうれん草、アスパラガスなどの野菜にも葉酸が多く含まれています。ゆでて食べる場合、小松菜100gあたり86µg、ほうれん草100gあたり110µg、アスパラガス100gあたり180µg、芽キャベツには100gあたり220µgの葉酸が含まれています。
野菜は加熱して食べることも多いため、電子レンジで加熱した後に冷凍保存しておくと、調理時に失われる葉酸の量を抑えることができます。
豆
枝豆をはじめとする豆類にも葉酸が多く含まれており、ゆでた枝豆からは100gあたり260µg、いり大豆からは100gあたり280µgの葉酸が摂取できます。
また、納豆などの豆加工食品も葉酸を効率よく摂取したいときにおすすめです。たとえば、糸引き納豆の場合は100gあたり120µgの葉酸が含まれています。
納豆の効果については以下の記事でも詳しく紹介していますので、参考にしてみてください。
くだもの
いちご、バナナ、キウイなどのくだものも、葉酸が比較的多い食品です。生のいちごには100gあたり90µg、生のバナナには100gあたり26µg、生のキウイ(緑肉種)には100gあたり36µgの葉酸が含まれています。くだものは生で食べることのできるものが多いため、熱に弱い葉酸も効率よく摂取することができるでしょう。
また、ドライフルーツも葉酸を多く含む食品です。乾燥バナナに含まれる葉酸は100gあたり34µg、ドライマンゴーには100gあたり260µgの葉酸が含まれており、くだものの中でもトップクラスの葉酸量を誇ります。
肉
レバーなどの肉類にも葉酸が多く含まれており、生の鶏のレバー100gあたり1,300µg、生の牛のレバー100gあたり1,000µg、生の豚のレバー100gあたり810µgの葉酸が含まれています。
しかし、レバーを生のまま食べることはできないため、加熱調理が必須。たとえば、豚のスモークレバー100gあたりの葉酸量は310µgなので、加熱によって葉酸が大きく減少していることがわかりますが、それでもほかの食品に比べれば多くの葉酸を含んでいるといえるでしょう。
レバーはビタミンAも豊富に含まれているため、妊娠中に大量に摂取すると胎児の奇形発生リスクが高まってしまいます。そのため、妊娠中に葉酸を摂取したいときは、レバー以外の食品を優先的に取り入れるようにしてください。
飲み物
固形の食品だけでなく、飲み物からも葉酸を摂取することができます。葉酸含有量は、せん茶100gあたり1,300µg、抹茶100gあたり1,200µg、紅茶100gあたり210µgです。しかし、浸出液を抽出することで葉酸の量が減少するため、せん茶の場合は浸出液100gあたりに含まれる葉酸は16µgになってしまいます。
そのため、お茶は葉酸を摂取する目的で飲むよりも、食事や休憩のタイミングで補助的に取り入れてみるといいでしょう。
ノンカフェインの飲料から葉酸を摂取したいときは、青汁やルイボスティーがおすすめ。青汁100gあたりの葉酸含有量は820µgです。さらに、ルイボスティーは葉酸がプラスされた商品も販売されており、中にはコップ1杯(約180ml)あたり250µgの葉酸が摂取できるものもあります。
葉酸サプリ
葉酸が不足していると感じるときは、サプリを利用してみてもいいでしょう。食品とは異なり数粒で1日に必要な葉酸を補うことができるため、とくに妊娠中の方に重宝されています。
ただし、葉酸以外のビタミンが配合されているサプリメントもあるので、パッケージに書かれた用法と用量をよく読んで摂取するようにし、過剰摂取には十分に注意してください。
(参考:昭和製薬株式会社│商品案内 ~健康な社会への貢献~)
細胞や血液を作るために欠かせない葉酸は、男女問わず必要な栄養素です。女性の場合、とくに妊活中や妊娠中は葉酸の推奨摂取量が多くなるため、食品やサプリメントから意識的に取り入れるようにしましょう。葉酸が不足すると、貧血や巨赤芽球性貧血になってしまう恐れもあるため、バランスのよい食事を心がけ、葉酸が不足しない生活を送ってくださいね。