ダイエットでは、体重を落とすことよりも「脂肪燃焼」が重要。お腹やお尻、二の腕についた体脂肪を燃焼させることで、理想のスタイルに近づくことができます。しかし、そもそも脂肪燃焼というのは、どのようなメカニズムで行われるのでしょうか?
この記事では、分かっているようで分かっていない脂肪燃焼のメカニズムを解説し、効率的に脂肪を燃焼する方法を紹介します。
脂肪燃焼のメカニズムとは
私たちは食事によって、生命維持に必要なエネルギーを得ていますが、食事を過剰に摂取してしまうと、体内で使いきれなかったエネルギーが中性脂肪として身体に蓄えられます。これが、私たちの身体についた頑固な体脂肪の正体です。
そして、脂肪燃焼というのは、この中性脂肪が「リパーゼ」と呼ばれる酵素によって中性脂肪と遊離脂肪酸とグリセロール(中性脂肪の構成成分のひとつ)へ分解され、エネルギーとして消費するメカニズムのこと。寒さを感じたり、運動によって多くのエネルギーが必要になったりすると、自律神経の交感神経が優位になり、このリパーゼの働きが活性化するため、脂肪燃焼が活発に行われるようになります。
ちなみに、エネルギーとして消費されなかった遊離脂肪酸は肝臓へ送られて再び中性脂肪に合成されます。体脂肪がなかなか落ちにくい理由は、ここにあると言えるでしょう。
(参考:おいしさと健康 glico│脂肪燃焼のメカニズムを知っていますか?)
どこから脂肪燃焼する?
「運動してあご周りは痩せたけど、ウエストがなかなか細くならない」といった悩みを抱える方も多いでしょう。実は、脂肪には落ちやすい部位・落ちにくい部位があるとされており、特に脂肪が落ちやすい部位を順に並べると、次のようになります。(実際には個人差や性差があるため、すべての人が当てはまるわけではありません)
1位 あご・ほほ
2位 ふくらはぎ
3位 肩や腕
4位 太もも
5位 胸
6位 お腹
7位 腰
8位 お尻
このように、体の各部位によって脂肪落ちやすさに差があるため、ダイエットにおける「部分痩せ」は難しいと考えられています。
脂肪燃焼するにはどのくらいの期間が必要?
私たちの身体に蓄えられている脂肪は1kgあたり約7,200kcalに相当するため、トータルで消費されるエネルギー、または摂取を抑えたエネルギーがこれを上回った時に、1kgの脂肪を燃焼させることができます。
例えば、1時間ウォーキングを行うと、男性の場合で約230kcal、女性の場合で約190kcalを消費することができるため、摂取カロリーは変えずに1日1時間のウォーキングを毎日続けたとすると、約30〜40日で体脂肪1kgを燃焼できる計算です。これに加えて、食事による摂取カロリーを制限すれば、脂肪燃焼までの期間をさらに短くすることができます。
(参考:TANITA│カロリーとは)
以下の記事でも運動別の消費カロリーについて詳しく紹介しているため、体脂肪1kgを燃焼させるまでの期間を運動の消費カロリーから計算してみましょう。
脂肪燃焼に時間帯や季節は関係ある?
①意外にも、「冬」は脂肪燃焼に向いている季節!
行事や年末年始で食事の機会が増えことから、冬は太りやすい季節というイメージを抱いている方は多いでしょう。しかし、私たちの身体の仕組みを考えると、実は1年でもっとも痩せやすい季節が冬だとされています。
人は寒さを感じると、自律神経の交感神経が優位になります。これにより、脂肪の分解に不関わる「リパーゼ」という酵素が活性化するため、通常字に比べて多くの脂肪を燃焼させることができるのです。
②1日のなかで脂肪燃焼に向いているのは「昼〜夕方にかけて」
季節のほか、時間帯によっても代謝が活発になるタイミングが存在します。それが、お昼から夕方にかけての時間です。そのため、この時間帯に運動をすることで、より効果的に脂肪燃焼させることができるでしょう。
脂肪には種類がある
脂肪は大きく分類すると「内臓脂肪」「皮下脂肪」の2種類に分けられます。それぞれの脂肪で特徴が異なるため、その違いを確認しておきましょう。
内臓脂肪
内臓脂肪は、おなかの内臓周辺に蓄積する脂肪です。内臓脂肪は、胃腸と直結した関係にあり、胃腸から肝臓へつながる静脈である門脈(もんみゃく)を通じて、肝臓へエネルギーを送りやすいという特徴があります。
食事量の増加や減少による影響が大きいため、比較的減らしやすい脂肪だと言えますが、内臓脂肪が増加した状態を放置し続けると高血圧・高血糖など生活習慣病の原因になると考えられています。
皮下脂肪
皮下脂肪は内臓脂肪より表層部分の皮膚〜筋肉間に蓄積される脂肪で、個人差はあるものの、体脂肪のうち大半を占めるのがこの皮下脂肪だと言われています。
内臓脂肪よりも体表面に近い場所に位置する皮下脂肪には、体温を維持したり、外部からの衝撃から内臓を保護したりする大切な役割があります。そのため、内臓脂肪よりも落とすのが難しいとされているのです。
どちらのタイプの脂肪が多いのかを調べる方法
内臓脂肪と皮下脂肪、どちらが多めなのかは人によって異なります。自分にはどちらの脂肪が多いのか、タイプ別の特徴から判断してみましょう。
内臓脂肪が多い体型=リンゴ型
リンゴ型の体型は「内臓脂肪型肥満」とも呼ばれており、お腹周りを中心に上半身に脂肪が付きやすいタイプです。皮下脂肪よりも内臓脂肪の割合が多く、特に、男性に多いとされています。
皮下脂肪が多い体型=洋ナシ型
洋ナシ型の体型は「皮下脂肪型肥満」と呼ばれ、お尻・太ももといった下半身や二の腕に脂肪がつきやすいタイプです。内臓脂肪よりも皮下脂肪の割合が多く、特に女性に多いとされています。
(参考:医学ボランティア会JCVN│あなたの体形は「リンゴ」型?それとも「洋ナシ」型?)
食事の脂肪燃焼メカニズム
コーヒーやお茶には脂肪燃焼効果があるという話を聞いたことがある人もいるでしょう。実際に、これらの飲み物に含まれるいくつか成分には、脂肪燃焼を促進する効果があると考えられています。
カフェイン
コーヒーに多く含まれるカフェインには、交感神経が刺激を刺激して興奮や覚醒を促すといった作用があります。これによって分泌されるアドレナリンやノルアドレナリンが脂肪燃焼を促進するのです。
そのため、運動前にコーヒーを飲むことで、より効果的脂肪を燃焼させることができると言われています。
カテキン
緑茶などに多く含まれるカテキンにはいくつか種類がありますが、そのなかでも渋みの元となる「ガレート型カテキン」は、食事によって体内に取り込んだ脂肪の分解・吸収を抑える効果があります。
最近では、「高濃度茶カテキン」の成分を配合したダイエット茶も販売されているため、気になる方はチェックしてみてください。
脂肪燃焼を促進する食べ物や飲み物
カフェイン以外にも、脂肪燃焼を促進してくれる食べ物・飲み物はいくつもあります。ここでは、代表的なものを紹介します。
たんぱく質を多く含むもの(鶏肉、納豆、卵など)
たんぱく質は、筋肉量の維持と増加に欠かせない大切な栄養素。トレーニングの後に、しっかりたんぱく質を摂取することで、効率よく筋肉量を増加させることができます。
筋肉量(除脂肪量)1kg増えると、1日あたりの基礎代謝量が50kcal増加すると言われているため、結果として脂肪を燃焼させやすい身体を作ることができるのです。
ビタミンB群が豊富な食べ物(豚肉、うなぎなど)
三大栄要素である炭水化物、脂質、たんぱく質のエネルギー変換を助ける役割を担っているのがビタミンB群です。たんぱく質とビタミンB6を一緒に摂取することで、たんぱく質の代謝がスムーズに行われるため、より効率よく筋肉量を増加させることができます。
前述したように、筋肉量が増えると基礎代謝量も増加するため、結果として脂肪を燃焼させやすくなるでしょう。
EPAが豊富な青魚(サバ缶など)
青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)は、脂肪酸のひとつ。EPAは脂肪燃焼を促進して、皮下脂肪・内臓脂肪を減らす手助けをしてくれます。
クロムを多く含む食材(ブロッコリー)
クロムはミネラルの一種で、脂肪燃焼や血糖値の安定化といった効果が期待できます。ブロッコリーはビタミンB群もたんぱく質も豊富なため、身体づくりにおすすめな食材と言え流でしょう。
カフェイン、カテキンを多く含む飲料(コーヒー、お茶など)
先に紹介したように、カフェインやカテキンには脂肪燃焼の効果が期待できます。ただし、特にカフェインは健康への問題も懸念されているため、過剰摂取には充分注意してください。
日本国内では、カフェインの摂取量に関する具体的な数値は定められていませんが、ヨーロッパの公的機関である欧州食品安全機関(EFSA)の研究では、カフェインの1日の最大摂取量を400mg以下、一度の摂取量を200㎎以下と定めています。
(参考:夢中になれる明日 Kracie│脂肪燃焼につながる、痩せるための食べ物って何?|脂肪燃焼コラム)
有酸素運動の脂肪燃焼メカニズム
ダイエットには激しい運動が必要と考えている人もいるかもしれませんが、強度の高い運動の場合は、脂肪ではなく糖質が主なエネルギー源となります。そのため、これからダイエットを始めるという人は、脂肪を主なエネルギー源とする有酸素運動から始めるといいでしょう。
脂肪の消費率が高い有酸素運動のポイントは、「中強度の運動を継続して行なうこと」です。週1回激しい運動をするよりも、なるべく毎日続けられる運動を行なうようにしましょう。
有酸素運動の時間の目安
脂肪燃焼のための有酸素運動は、20分以上を目安に取り組むのが理想的。これは、主なエネルギー源が糖質から、脂肪に切り替わるまでの時間がおおよそ20分と考えられているためです。
しかし、「毎日必ず20分以上運動しよう」と意気込みすぎると、それがストレスとなって途中で挫折してしまうことにつながってしまいます。
実際には20分未満の運動でも、脂肪はエネルギーとして使われているため、時間が取れない時は1日5分、時間があるときは1日20分〜60分といったように、無理のない目標を立てて有酸素運動を継続してみてください。
脂肪燃焼したいなら心拍数を意識しよう
有酸素運動の脂肪燃焼の目安は、「中強度」の運動と紹介しました。これは、運動している最中、軽く息が弾みながらも会話はスムーズにできる程度のペースが目安となります。
より正確に運動強度を調べたい人は、スマートウォッチなどで心拍数を測りましょう。中強度の運動にあたる心拍数の目安は、「138−(年齢÷2)」で計算することができます。例えば、30歳の人の場合なら、心拍数が123になるような運動が中強度の運動にあたります。
筋トレの脂肪燃焼メカニズム
これからダイエットでトレーニングをしたいと考えている方は、有酸素運動だけでなく無酸素運動、つまり筋トレも運動メニューに加えるのがおすすめです。なぜなら、筋トレも脂肪燃焼に効果が期待できるためです。ここでは、その理由について見ていきましょう。
筋肉量が増えて「太りにくい身体」を作れる
私たちの身体は、横になって安静にしている状態でもエネルギーを消費しています。これを「基礎代謝」と呼び、基礎代謝の約20%が骨格筋、つまり筋肉で消費されているのです。
つまり、筋トレによって筋肉量が増えるということは、そのまま基礎代謝量を増やすことにつながるため、長期的な目線で見ると、筋トレは「太りにくく痩せやすい身体」を作るのに最適と言えるでしょう。
筋トレに隠れた「アフターバーン効果」
筋トレなどの無酸素運動の後、体内では「アフターバーン効果」と呼ばれる現象が起きていることをご存知でしょうか。この現象によって、運動の後一定時間は、通常よりもエネルギーの消費量が増加すると考えられています。
強度の高い運動を伴う筋トレ中は、呼吸によって十分な酸素を取り込むことができません。この時に不足した酸素を取り戻そうと、運動後には酸素の消費量が増えるため、運動後しばらくの間はエネルギー消費量が高い状態が続くのです。(運動後過剰酸素消費量(EPOC)の増加)
また、筋トレなどの激しい運動によって体内に乳酸が蓄積されると、成長ホルモンの分泌が活発になるため、エネルギーの消費量が増加するとされています。
(参考:COSMOPROTEIN│運動後もカロリー消費が続く!?「アフターバーン効果」を解説)
脂肪燃焼に効果的なトレーニグメニュー
脂肪燃焼を目的としてトレーニングをする場合、次の2点を意識することが大切です。
1つ目は、大きな筋肉を使うこと。これは、運動時の消費エネルギー量がより多くなるためです。2つ目は、太りやすい部位を動かすこと。これは、動作量が少ない部位は脂肪が付きやすいと考えられているためです。
それでは実際に2点を意識したトレーニング種目と、忙しい人におすすめのトレーニングメニューを見ていきましょう。
スクワット(下半身を鍛えるトレーニング)
(1)両足は肩幅よりやや広く開き、つま先を少し外へ向けます。
(2)両手はまっすぐ前に伸ばすか、胸の前で組みます。
(3)ももが地面と水平になるまで、ゆっくりとしゃがみます。
(4)もも裏とお尻の筋肉を使うイメージで、まっすぐ立ち上がります。
この動作を15回〜20回で1セットとし、3セットを目安に行ってみましょう。
【ポイント】
*しゃがむ際は、ももの前の筋肉が効いていることを意識する。
*ケガを防止するため、しゃがんだ時にひざがつま先よりも内側に入らないようにする。
*かかとやつま先に体重が偏らず、足裏全体で地面を踏むよう注意する。
*あごをあげてまっすぐ前を向くと、反り腰になりやすいため、顔は上体に合わせて、2m〜3m先の床を見るようにする。
プッシュアップ(腕立て伏せ。胸や二の腕を鍛えるトレーニング)
(1)うつ伏せの姿勢になり、両足を肩幅と同じ幅で開きます。
(2)腕全体を外側に60°広げ、肘を90°に曲げて両手を床につきましょう。
(3)目線は身体の位置に対して正面を向き、かかとから頭までが一直線なることを意識しながら、肘を伸ばして身体を持ち上げます。この時、腰を落としたり、くの字に曲げたりしないように注意しましょう。
(4)(3)の体勢から、肘が90°になるまで再び身体を下ろしてください。
この動作を10回〜12回で1セットとし、3セットを目安に行ってみましょう。
ドローイン(体幹周りを鍛えるトレーニング)
(1)床に仰向けになり、ひざは軽く曲げておきます(立ったままの姿勢でも構いません)。
(2)両手はお腹の上に置き、大きく息を吸ってお腹を膨らませましょう。
(3)息を吐きながら、下腹部や背中の方にも刺激を与えるよう意識してお腹を限界まで凹ませます。
(4)再び息を吸いますが、このときお腹が凹んだ状態を維持してください。
この動作を10秒〜30秒で1セットとして行いましょう。慣れてきたら回数を増やして強度を上げるのがおすすめです。
HIIT(高強度インターバルトレーニング)
HIIT(ヒット)は、有酸素運動と無酸素運動(筋トレ)の効果が一度に得られるトレーニングです。さらに、最大でも4分程度で行うことができるため、忙しい人でも取り組みやすいでしょう。
具体的な内容は、「20秒間全力で身体を動かす→10秒休憩をする」を1セットとして、合計8セットを目安に行うというものです。運動の内容に明確な決まりはありませんが、次のようなものを選ぶのがおすすめです。
・全力でダッシュする
・エアロバイクをこぐ
・その場でジャンプをする
・スクワットやプッシュアップなど、筋トレを組み合わせる
・階段の上り下りをする
・縄跳びをする
HIIT(ヒット)を行う上で大切なのは、1セットで体力を使い切るほど全力で動くということです。ただし、初心者の方は無理をすると怪我の原因にもなるため、徐々に身体を慣らしながら取り組みましょう。
ダイエットを行っているときに、すぐに効果を出したいと考える人は多いはず。しかし、脂肪燃焼における最大の秘訣は、「継続し続ける」ことです。
運動に取り組む時間がなかなか取れないという場合は、早歩きやジョギングなど、生活の中で手軽に継続できそうな運動を選び、無理のない範囲で継続してみましょう。