自分の健康状態を正しく把握するためにも、日常的に体温を計ることは非常に大切なことです。また、最近では「体温を上げると健康になる」という言葉をよく耳にするようになりましたが、体温を上げることで具体的にどのような効果があるのでしょうか。
この記事では、体温が上がることで得られるメリットや、体温を上げる食べ物や飲み物を紹介します。
理想的な体温とは?
個人差はあるものの、健康的な成人の場合、理想的とされる体温は36.5℃から37.1℃とされています。
反対に体温が36℃以下の場合は「低体温」に分類され、そのまま放置してしまうと免疫力の低下や基礎代謝の低下など、身体に様々な悪い影響を及ぼします。最近では、冷暖房の普及や極端なダイエットなどの要因によって体温の調節機能が低下し、正常な体温を維持できない人が増えているようです。
体温の平均
日本人の平均的な体温は36.6℃から37.2℃。10歳から50歳前後の健康な人に限ると、平均値は、36.89℃となります。
37℃以上ある場合は発熱に該当するのではないかと思う方もいるかもしれませんが、感染症法において、発熱の定義は37.5℃以上、高熱の定義は38℃以上と定められており、医学的に正しい見方をすれば、37℃は平均的な体温の範囲内です。
とはいえ、体温は個人差が大きいため、普段の自分の体温に比べて明らかに体温が高い場合は発熱の可能性があると考えてよいでしょう。
体温が低いことによる影響
体温が低い状態を放置していると、健康状態に悪い影響を及ぼす場合があると説明しました。ここでは、低体温の主な症状を見ていきましょう。
免疫力の低下
低体温では、血管が収縮して血液の流れが悪くなるため、血液中に存在する免疫機能を持った白血球が正常に作用できない状態となります。これによって、必然的に病気から身体を守る免疫力が低下し、風邪や感染性にかかる可能性が高くなってしまうのです。
このように、体温は免疫力に深く関係しているため、体温を上げて血液の循環を正常に保つことは、健康な身体作りに欠かせないと言えるでしょう。
(参考:日本橋室町三井タワー ミッドタウンクリニック│低体温だと免疫力が低下するってホント?)
基礎代謝の低下
健康的な体温を保つことによって活発に代謝が行われますが、低体温を放置していると、血液の巡りが悪い状態が続いて基礎代謝が低下し、体温を維持することが難しくなって冷えの症状が進むという悪循環に陥ってしまいます。
さらに、基礎代謝が低下すると、エネルギーが消費されにくくなって、痩せにくく太りやすい身体になってしまうばかりか、栄養状態の悪化や筋肉量の減少などを引き起こしてしまう場合もあるのです。
(参考:社会福祉法人 恩賜財団 済生会│低体温ってどんな状態?)
判断力の低下
低体温が悪化すると、体内での酵素の働きが弱まって精神活動や運動能力が低下するため、本来のパフォーマンスを発揮できなってしまう場合があります。特に、判断力は低体温の影響を受けやすく、体の内部温度が35℃~33℃になると理論的な思考ができなくなってしまうと考えられているのです。
体温が低い原因
ここからは、体温を低下させてしまう主な原因を紹介します。
運動不足
基礎体温が下がる原因のひとつに運動不足が挙げられます。
ライフスタイルの変化に伴って、日常生活における運動量が減少した人も多いのではないでしょうか。運動量が減少することで筋肉量も減少しますが、筋肉は人体の中で最も大きな熱生産器官であるため、筋肉量が減ると体温も低下してしまいます。
老化
人は、年をとるに従って運動機能や生理機能が衰えていきます。それと同様に、代謝を上げたり皮膚の血流量を下げたりといった体温調整機能の働きが低下していくため、高齢になるにつれて体温が低下していくとされているのです。
病気
臓器の働きや代謝、体温などは自律神経によってコントロールされています。自律神経には、日中や活動時に優位になる「交感神経」と、夜間やリラックス状態の時に優位になる「副交感神経」という2つの種類があり、これら作用が相反する神経がバランスよく働くことで、私たちの健康は保たれているのです。
しかし、何らかの要因によって自律神経のバランスが崩れると、体温の調節機能が低下するほか、皮膚の血管が広がって低体温症に陥ってしまう可能性もあります。
また、女性で低体温が続いている場合、排卵障害や卵巣の機能低下といったトラブルの兆候である可能性があるため、注意が必要です。
ストレス
人間関係や家族問題など、社会生活の中で感じるストレスも低体温を招く原因のひとつ。ストレスを感じることによって分泌されるホルモンは、血管を縮め、血流を悪化させるため、強いストレスが低体温を招いてしまう場合があるのです。
エアコン
現代人が低体温になってしまう原因として、エアコン生活によって汗をかきにくい環境であることが挙げられます。
また、あまり汗をかかないと、脳の視床下部にある体温中枢を刺激する機会が少なくなるため、体温を調整するための発汗中枢が正常に働かなくなり、低体温になってしまう場合もあります。
体温を上げる食べ物・飲み物
ここからは実際に体温を上げる方法を紹介します。健康な体温を目指すには、身体の内側からアプローチしていくことも大切。まずは、体温を上げるのに効果が期待できる食べ物・飲み物から見ていきましょう。
体温を上げる食材
根菜類や生姜といった土の中で育つ野菜や、冬の時期や寒い地域で栽培された食材は身体を温める働きがあるとされているため、冷えを感じている方は積極的に食べましょう。反対に、夏野菜には身体を冷やす働きがあるとされているため、煮たり焼いたりといった加熱調理をしてから食べるのがおすすめです。
また、身体の中で糖質を燃やし、エネルギーを生み出すのに欠かせない「ビタミンB1」や、血液の流れを促す「ビタミンE」などの栄養素も、体温を上げる効果が期待できます。ビタミンB1は豚肉や玄米、大豆などの食品から、ビタミンEは卵やアボカド、オリーブオイルなどから摂ることができるため、日々の食事に取り入れてみてください。
体温を上げる飲み物
低体温の方は、冷水や冷えたジュースなどは避けて白湯(さゆ)や温かいお茶を選んで冷えを防ぎましょう。
また、お湯に生姜を入れた生姜湯も体を温めてくれる飲み物です。最近ではチューブタイプの生姜のほか、生姜を乾燥させてパウダー状にしたものも販売されており、手軽に生姜湯作ることができます。
そのほか、根菜を入れた温かいスープや、飲む点滴と呼ばれる甘酒などもおすすめです。
(参考:TIGER│体を温めて不調を撃退!温活のやり方と適した飲み物)
体温を上げるための運動
熱を生み出す筋肉の量を増やし、基礎代謝を上げて血流を促すことで体温の低下を防止することができます。おすすめなのはウォーキングや筋トレなど、習慣化できる運動です。
冷え性の人は、特に下半身を鍛えるのがおすすめ。下半身には、体の中で最も大きな筋肉である大腿四頭筋群があるほか、多くの筋肉が集中しているため、それらの筋肉を鍛えることで血液循環が促され、体温を上げることができます。
激しいトレーニングではなく、自宅で手軽に行えるストレッチなどでも血流を促進させることができるため、無理なく続けてみましょう。
体温を上げるツボ
ツボは「エネルギーの通り道」と言われており、ツボを刺激することで、血液などの体液の循環の促進に効果が期待できます。
ここでは、体温を上昇させるのに効果が期待できるツボを紹介していますので、寝る前や休憩中などの隙間時間にマッサージしてみましょう。
八風
八風(はっぷう)は足の甲側の指と指の間の付け根にあるツボで、血流を促し、代謝の向上に役立つとされています。親指と人差し指で挟んで揉んだり、引っ張ったりして刺激してみましょう。
また、指同士を組むイメージで、足の裏側から指と指の間に手の指を差し入れ、そのままグルグルと回せば、一度で4ヵ所の八風に刺激を与えることができます。
湧泉
足の指を曲げると裏に「への字」が現れ、その交点に凹みができます。この凹みは湧泉(ゆうせん)と呼ばれるツボで、代謝の向上に効果が期待できるほか、浮腫みの改善や、筋肉疲労の回復などにも役立つと考えられているのです。
湧泉を刺激する際は、両手の親指で押したり緩めたりする動作をそれぞれ3秒ずつ数回繰り返します。親指で刺激するのが難しい場合は、ゴルフボールなどを使って押すのも効果的です。
三陰交
三陰交(さんいんこう)は、足首の内側にあるツボで、くるぶしから指4本分上の骨の際にあります。
足首を片方の膝の上に乗せて2~3分程度押すように刺激すると、下半身の冷えや浮腫みの改善に効果が期待できるほか、生理痛・更年期障害などにも役立つとされています。
(参考:エステー│季節のくらし)
血海
血海(けっかい)は、膝のお皿の内側の端に薬指をおき、指幅3本そろえて、人差し指があたる場所にあるツボです。血流を促す働きがあるほか、シミやくすみの改善や婦人科系の症状に効果が期待できるツボとしてよく知られています。
マッサージの際は、親指で垂直に押したり緩めたりする動作をそれぞれ3秒ずつ3~5分程度繰り返しましょう。
気端(きたん)
足先の冷えを改善したい場合は、足指の先端にある気端(きたん)を刺激するのがおすすめです。
手の指で気端の先端をつまみ、少し痛みを感じるくらいの強さで揉み込んでみましょう。
そのほか、足湯やカイロなどで温めても効果が期待できます。
(参考:翁鍼灸院│冷え症の予防と対策)
体温を上げることで、身体の機能が活発になり、様々な病気から身を守る免疫力を高めることができます。体温は適度な運動習慣や食生活の改善によって上げることができるため、記事の内容を参考に、普段から温を上げる習慣をつけていきましょう。