楽観主義や悲観主義といった、人の性質を言い表すのによく使われる言葉。この記事では、楽観主義がもたらすメリットやデメリット、似た意味で使われる「ポジティブ」との違いなどについて詳しく紹介します。
楽観主義とポジティブの違い
そもそも「楽観主義」とはどのような意味なのでしょうか?世界大百科事典には以下のように書かれています。
楽天主義,楽観主義と訳される。ラテン語のオプティムスoptimus(最善の意)に由来し,世界や人生の価値や意義を究極的には肯定的に認める立場をいい,日常の用語としては,ものごとや事態のなりゆきをすべて良い方向に考える心理的傾向をいう。出典: コトバンク
一方で、よく似た意味で使われる「ポジティブ」には以下のような意味があります。
【一】[名]写真で、肉眼で見た被写体と同じ明暗や色相で写っている画像。陽画。ポジ。⇔ネガティブ。 【二】[形動]積極的であるさま。出典: weblio辞書 デジタル大辞泉│ポジティブ【positive】
本来「積極的に物事を行う」などの意味がある「ポジティブ」に比べて「楽観主義」には「肯定的に物事を捉える」という違いがあると言えます。
楽観的と楽天的の違いや使い分け方
ここでは、「楽観主義」と「ポジティブ」と同様に似た意味を持つ言葉として挙げられることが多い「楽観的」と「楽天的」の違いを見ていきましょう。
楽観的の意味や使用例
まずは「楽観的」の意味や使用例を見ていきましょう。日本国語大辞典には「楽観的」の意味について以下のように記載されています。
物事の成り行きをよい方に考えて心配しないさま。先行きを明るく考えてくよくよしないさま。出典: コトバンク 精選版 日本国語大辞典│楽観的
簡潔にいうと、「楽観的」は、「未来の先行きをいい方向に考えること」を意味することが分かるでしょう。
使用例としては、「明日の試合について楽観的な考えでいる選手が多い」「事態の行く末を楽観的に眺めていた」などが挙げられます。
楽天的の意味や使用例
次に、「楽天的」の意味や使用例を紹介します。日本国語大辞典には「楽天的」の意味について以下のように記載されています。
物事にくよくよしないで、何事もいいようにとらえるさま。楽天であるさま。のんきなさま。⇔厭世的。出典: コトバンク 精選版 日本国語大辞典│楽天的
簡潔に言うと、「楽天的」は、「物事を常に明るくのんきに捉える様子」を意味することが分かるでしょう。
使用例としては、「あの経験について楽天的に捉えられるようになった」「彼女は何に対しても楽天的な人だ」のように使われます。
ふたつの言葉の意味を見て分かるように、「楽天的」と「楽観的」には大きな違いはありません。
一方で、「楽観的」が「これから起こりうる未来のこと」についていい方向に考える様子を示すのに比べて、「楽天的」は「すでに起こっていること」について物おじしない様子を示しているというニュアンスの違いがあります。さらに、「楽観的」よりも「楽天的」の方が、前向きの姿勢があることも違いのひとつと言えます。
楽観主義によるメリット
楽観主義でいることのメリットは何なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
決断が早く行動力がある
楽観主義の人は常に「なるようになるだろう」と考えているため、何かを選択する際の決断が早いという特徴があります。また、直感を信じて迷いなく行動できるため、素早い判断力が問われる場面で頼りにされるでしょう。
コミュニケーション能力が高い
積極的に人とコミュニケーションを取れるという点も楽観主義のメリットのひとつです。楽観主義の人は基本的に物事のいい面を捉える力があるため、相手のいいところによく気付き、興味を持って話しかけることができるのです。初めての環境やビジネスシーンなどで、周囲と良好な関係を築いていけるでしょう。
(参考:HITACHI 人を活かす心理学│【第2回】楽観主義者は成績がよい?)
ストレスを感じにくい
人間関係や生活環境など、日常を送る上でストレスが溜まることは避けては通れないことのひとつ。しかし、楽観主義の考え方で過ごすことによって、多少ストレスを感じても「くよくよ悩んでいても仕方がない」と捉え、おおらかに過ごすことができるのです。
気持ちをすぐに切り替えられる
気持ちの切り替えが上手い点も、楽観主義によるメリットのひとつです。仕事や勉強で失敗しても、それほど悩みすぎることなく、すぐに気持ちを切り替えて次の行動に移すことができるのです。
人のミスに寛大
楽観主義の人は予想外の出来事に対して「なんとかなる」「大したミスではない」と捉えます。そのため、自分や誰かがミスをしたとしても怒ったり批判したりせず寛大な対応をとることができるのです。
(参考:東洋経済オンライン│仕事中「なぜか機嫌がいい人」がしていないこと)
楽観主義によるデメリット
新しいことに挑戦したり、苦しい状況で踏ん張ったりするときに有効的な楽観視の考え方。
一方で、こつこつ地道に取り組んだり、堅実にタスクをこなしたりすることにはあまり向いていないという一面があります。
ここでは、そんな楽観主義の考え方のデメリットについて見ていきましょう。
リスクを考えない
物事を楽観的に考えるということは、リスクを注視しないということでもあります。そのため、危機感や責任感がない人のように見えてしまうことは楽観主義のデメリットのひとつです。とくに学校の課外活動や仕事のプロジェクトなど、多くの人と協力しなければいけない場面で、楽観主義の考え方を貫くと反感を買ってしまうおそれがあります。
見切り発車で行動をする
楽観主義は何にでも物おじせず、見切り発車で行動してしまう一面があるため、危機を見逃してしまう可能性があります。それがいい方向に向かうこともありますが、必ずしも毎回成功するとは限らないのです。
こつこつ努力することが難しい
楽観主義は、しっかりと計画を立てることが苦手なため、堅実に作業を行うことやこつこつ努力することには向いていないという面があります。
頭の中で思い描くだけで満足してしまう
楽観主義は、未来を良い方向に思い描いただけで、何かを成し遂げた気分になってしまう一面があります。そのため、目標や目的を達成するために、自発的に努力をしなければいけない場面では楽観主義の考え方を取り入れるのは控えたほうがいいでしょう。
マイペースすぎる
「人は人、自分は自分」と常に自分を軸に行動する楽観主義者は「マイペースな人」と思われてしまう場合もあります。学校や会社など、周囲と協力する場面では自分だけでなく人との兼ね合いも考えて行動するといいでしょう。
楽観主義を習慣づける方法
さまざまなメリットやデメリットがある楽観主義。適切に取り入れることで自分にとってプラスに働くこともあります。最後に、楽観主義の考え方を習慣づける方法を紹介します。手軽に行えるものもあるため、自分に合った方法を見つけてみましょう。
物事をシンプル考える癖をつける
自分の行動や選択に自信が持てず、不安や心配が尽きないという場合は、あれこれ考えずにシンプルに考えて行動することも大切です。
物事をシンプルに捉えることで、自分の気持ちに忠実で居られるようになるため、自信にもつながるでしょう。
目の前のことに集中する
何事においても未来のことを考えてしっかり逆算して計画を立てることは大事ですが、少しでも計画通りにいかなかったり進みが遅かったりすると焦りや不安が生まれてしまう場合があります。そんなときは、余計なことは考え過ぎず、今できることや今すべきことにだけ集中してみましょう。
成功体験を重ねる
楽観主義の人は物事に対し「きっとうまくいくだろう」と考えています。このように余裕をもって大きく構えるためには、成功体験を経験するのがおすすめです。「事前に予習をしておいたから小テストで思ったより高い点数がとれた」「ありものでなんとなく作ったご飯が美味しかった」など、どんな些細な成功体験でも積み重ねれば少しずつ自分の自信となっていきます。
自分と他人を比べない
自分と他人を比べて、自分は劣っているのではないかと悲観したり焦ったりした経験がある方は多いでしょう。
自分を他人と比べないことは楽観主義のマインドを持つ際の重要なポイントです。評価基準を「他人との比較」にせず、自分が思うままにやること、自分が満足することを重視視してみましょう。
まとめ
現代人は仕事や学校など生活を送る中でさまざまなストレスを抱えています。常にあらゆる場面を想定して気を張っていては疲れがたまってしまいます。
この記事で紹介した楽観主義のメリットデメリットを参考に、適度に楽観主義の考え方を取り入れてストレスなく毎日を過ごしましょう。