念願のデジタルカメラを買ったはいいけれど、どうやって写真を撮ればいいのか分からない…。そんな悩みに暮れていたDMMオンラインサロンのスタッフが、オンラインサロン「47里ほっと」のオーナー・佐藤尚さんの個人レッスンを受けることに。右も左も分からない写真の素人が、30年のキャリアを持つ佐藤さんから写真を教わったらどうなるのか。驚きのビフォーアフターが、結果として待っていました。
30年、風景写真だけを撮り続けた
東京渋谷区の森林公園、代々木公園。絶好の写真日和とも言える快晴に恵まれた今日、入口で私たちを待っていたのは、DMMオンラインサロンスタッフ・北島でした。
今回は写真を教えていただくために、デジタル一眼レフカメラ「CANON EOS Kiss X10」を持って参戦。
そんな北島の突然の依頼に、快く応じてくださったのがオンラインサロン「47里ほっと」を運営する佐藤尚さんです。
この日のために、わざわざ鳥取から東京へ戻ってきてくださったんだとか。本当に…申し訳ございません…。
――佐藤さん、本日はわざわざ東京まで戻ってきてくださりありがとうございます。
北島:今日はよろしくお願いいたします!
佐藤さん:いえいえ。僕も今日は皆さんに写真のことを教えられるのが楽しみです。
――佐藤さんは「風景写真家」ということで、全国のさまざまな場所で写真を撮り、写真集や作品を発表していますよね。鳥取に行っていたのも、作品づくりの一環だったのですか?
佐藤さん:そうです。2週間ほどかけて、日本海側をぐるりとめぐっていたんですよ。僕は30年間、ずっと「風景写真家」として、フリーランスで活動してきました。昔から旅が好きで、全国を旅しながら写真を撮ることを仕事にできたらいいなと思っていたんです。以来、今日までファッションや料理、人物といった撮影の依頼はお受けすることなく、ずっと風景だけを撮ってきました。
――すごい。まさに風景撮影のプロフェッショナルですね。オンラインサロン「47里ほっと」を開設したのは、どんな経緯があったのですか?
佐藤さん:順を追って説明しますね。
私は約10年前から、風景写真の活動の幅を広げました。その中でも特にイベント出演を増やしたんです。僕が愛用している富士フィルムさんのイベントや、CP+(シーピープラス)という世界最大級の写真・映像に関するイベントに登壇するようになりました。
それ以外に、オンラインサロンとは別に「里ほっと」というワークショップを地元・埼玉県で開催しています。この撮影会は無料のイベントで、2011年の東日本大震災をきっかけに「地域の方々と交流し、友達をつくろう」という思いからはじめました。
――リアルのイベントにたくさんご出演したり、ご自身で主催したりしてきたんですね。
佐藤さん:そんなリアルイベントも、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけになくなってしまいました。どうやって活動を続けようかなと考えた時、以前から興味のあったオンラインサロンをやってみることにしたんです。
私は「写真を発表したい人」なので、オンラインサロンでとっておきの写真を、皆さんに発表したいなと思いました。それと同時に、旅先で撮影した写真について、どんなふうに撮ったのかを伝えていきたいなと。
オンラインの利点は、全国の方々とつながれることです。そこで、オンラインサロンの名前も47都道府県にちなみ「47里ほっと」にしました。今年の春からは、様子も見つつリアルのイベントを開催しています。
「最初の一枚」が撮れれば、自然とたくさん写真が撮れるようになる
――今日は、代々木公園を題材に佐藤さんの写真のコツやポイントを教わりたいなと思っています。
北島:代々木公園といえば「噴水広場」があるじゃないですか。そこで写真について教えてください!
佐藤さん:え、こんな暑い日に噴水広場まで行くのは大変じゃない…?そこまで行かずとも、代々木公園入口に素敵な撮影スポットがたくさんありますよ。
北島:え!?そんな写真映えする場所があったんですか。
佐藤さん:もちろん、私も全国をめぐるときは、代々木公園の噴水広場のようなシンボルをよく撮影してます。それ自体は間違っていないんですが、今日はそういうシンボルに足を運ばずとも、被写体はたくさんあるんだよというのを、2人に伝えたいと思っています。
――それは面白そうですね。それではさっそく、写真撮影をはじましょうか!
佐藤さん:その前に!僕はこういう撮影会で、必ず皆さんにお伝えしていることがあります。
それは、「まずとにかく“最初の一枚”を撮りましょう」ということです。
北島:“最初の一枚”ですか?何を撮ればいいんでしょうか?
佐藤さん:なんでも大丈夫!とにかく1枚目をすぐに撮らないと、次の写真が撮れなくなっちゃうんです。「カメラを持って出かけたのに、なにを撮ろうか迷ったまま、1枚も撮らず帰ってきてしまった…。」
こういう経験をお持ちの方がたくさんいるんですね。1枚目をパッと撮ると、「写真を撮るぞ」という心のスイッチが入って、2枚目、3枚目を次々撮れるようになるんです。
――なるほど。そういう事ですか!
佐藤さん:代々木公園の入口そばには、木々がたくさん生えています。被写体がたくさんあるので、いくらでもいい写真を撮れると思います。逆に噴水広場の噴水のようなシンボルが見えてしまうと、被写体を探し出す気持ちが生まれなくなっちゃうんです。
――だから、公園入口で撮りましょうと提案してくれたんですね。
「色・形・線」を意識して撮りたいものを決める
佐藤さん:では、さっそく撮ってみましょうか!適当に歩きながら、気になった場所でまずは最初の一枚を撮りましょう。
北島:えっと、どこにしようかな…。あ、ここいいかも!
撮影:北島
佐藤さん:お、いいじゃないですか!
――もしも佐藤さんが、同じ立ち位置で写真を撮るとしたら、何を被写体にしますか?
佐藤さん:なかなか厳しい条件を提示しますね(笑)。僕なら〜…。このあたりかな。
撮影:佐藤さん
――かなり違って見えますね!
佐藤さん:そうだなあ、これなら縦撮りのアングルの方がいいかも。
撮影:佐藤さん
北島:本当に同じ場所から撮ったんですよね?僕のと全然違う…。
佐藤さん:大前提として、代々木公園にはたくさんの木があるじゃないですか。僕はそこで、木にフォーカスしてそれ以外のものは入れないようにしたんです。そうすることで、「これは木の写真だよ」とハッキリ伝えることができます。
そして、写真を撮るときに大切にしたいのが「色・形・線」というイメージです。
――「色・形・線」ですか?
佐藤さん:そうです。この3つのうち、どれでこの写真を構成するかを考えると、写真の見え方がガラリと変わります。例えば、さきほどの写真では「線」を意識しました。
――まっすぐ伸びている木々と、幹の上で広がっていく枝…。確かに、「線」がはっきり協調されていますね。
北島:佐藤さんの話を聞いてから、僕と佐藤さんの写真を見比べると、すごく納得感がありますね…。同じ立ち位置でもこんなに写すものが変わるんだ。
被写体を見つけたらいろんな角度で観察する
佐藤さん:こんな感じで、被写体となる木が決まったじゃないですか。「この木面白そうだな」と思ったら、今度は立ち位置を変えて、たくさん動いてみましょう。
木のまわりを歩きながら、いろいろな角度で木を観察して、違う角度で撮影してみるんです。例えば、こんな感じでもっと近づいて、下のアングルから撮ってみましょう。
撮影:佐藤さん
北島:より迫力が強調されてますね!
佐藤さん:もう少し視点を変えてみましょう。
撮影:佐藤さん
北島:同じ木なのに、見え方がまるで違います!
佐藤さん:この写真は木の皮にフォーカスしていたんですが、ひとつ前の写真と違って、周りの木を写さないように撮っているんです。
――余計な情報がなくなって、写したいものに目が行くようになっていますね。あえて「写さない」というのも大切なんですね。
リズムよく撮るほど写真が楽しくなる
佐藤さん:見る角度を変えて、こういう公園の樹木に付けられた番号を撮影してもいいと思います。
撮影:佐藤さん
佐藤さん:写真を撮るときのポイントは「リズム」です。こういう写真を撮ったとして、「これを撮ったからどうなるの?」「これをどうしたいの?」なんて考えはいりません。気づいたら撮る。それだけで写真って楽しいものなんですよ。この木の下に生えている草木が気になったら、そのまま撮っていいんです。
すこし工夫を加えて、背景をスッキリさせるために奥に幹を入れ、風で草が傾いた時に写してみましょう。
撮影:佐藤さん
――すごい。後ろの背景のおかげで、手前の草がすごく際立ちますね。
佐藤さん:歩いているなかで気づいたものがあれば、まずは撮ってみる。そこから「今度は別のアングルで撮ってみよう」と、いろいろ探っていくんです。そうすると素敵な被写体がどんどん浮かび上がってきます。
撮影会でも、皆さんには「リズムよく写真を撮っていきながら、そのなかで表現を楽しみましょう」と伝えています。
北島:とにかく撮っていくのが大事なんですね…。
佐藤さん:そのなかで、「色・形・線」をもとに考えて邪魔になりそうなものは写さないようにしてみます。そうやって「何を撮りたいか」がハッキリしていると、すごくいい写真になりますよ。例えば、さっきまでの木は枝の広がりが魅力的でしたが、向こうにある木はまっすぐ伸びています。あの木を下からのアングルで撮ると、すごく力強い表現になると思うんですよね。
北島:試しに僕も撮ってみます!…これでどうだ!
撮影:北島
佐藤さん:すごくいい!でも、左下の空間がすこし余計な表現に感じられますね。もっと下から、もっと木に寄って撮ってみましょう。ポイントは、ズームレンズで寄るのではなく、自分で動いて木に寄るという点です。立ったままの目線ではなく、しゃがんで撮ってみてください。アングルを変えてみて、なるべく細い枝を入れずに幹だけを撮影してみましょう。
北島:もっと下からですか!よいしょっと…。
北島:これでどうだ!!
撮影:北島
佐藤さん:いい構図!幹が上へぐっと伸びている感じがする!
――角度や目線でここまで変わるんだ、すごい…。
佐藤さん:あとは、もっともっと木の周りを歩いて観察してみるといいですね。例えばこの木なら、奥にある太い幹もハッキリ写したいので、もう少し回り込んでみるとか。そうすると、幹が3本から4本になって力強さが増すと思います。
北島:なるほどなあ。
佐藤さん:こうやって、意図を込めて写真を撮ってみてください。写真に込めた意図が写真を見た人に伝わると「しめしめ」と思うんです(笑)。これが「表現」の楽しさなんですよ。
北島:狙ったとおりの表現が相手に伝わったら、すごく楽しそうです。
佐藤さん:サロンでは、こんなふうに自分が撮影したものに自分なりの工夫を加えて解説をしています。そこで何かを学んでくれれば嬉しいなと思っています。
――「写真を撮影する楽しさ」を再発見したような気分でした。本日は暑いなか、本当にありがとうございました!
この個人レッスンは、トータル30分程度と短いものでした。しかも、撮影場所は代々木公園の入口のほんの一部です。それでも、写真の素人であるDMMスタッフ北島の腕がみるみるうちに上達していったのを感じられたかと思います。
・まずは最初の一枚を撮る
・「色・形・線」で統一感のある写真を意識する
・気になる被写体を見つけたら、足を動かしながら観察してアングルを探す
この3つで、皆さんの写真もグッとよくなると思います。デジカメやスマホを手に取って、近所やお気に入りの場所をめぐりながら、たくさんの「被写体」を探してみましょう。
「佐藤さんの話をもっと聞きたい!」「佐藤さんの写真を見てみたい!」そうと思った方は、オンラインサロン「47里ほっと」をのぞいてみてください。より深い風景写真の魅力を、さらに発見できるでしょう。