食費は生活するうえで必ず必要となる避けられない支出の1つ。
残業が多く自炊する時間が取りづらい人の場合、昼は外食、夜はコンビニ弁当という生活になってしまうこともあります。そうなると食費がかさんでしまい、給料日前のお財布事情に頭を悩ませてしまう人もいるかもしれません。
そもそも、食費には平均でどれくらいお金をかけるものなのでしょうか。この記事では、世帯人数別や年収別など、様々な観点から日本人の食費の平均みていきます。さらに、食費と関係の深い「エンゲル係数」にも触れ、食費を節約するためのコツも解説しますので、食費が気になっている皆さんは是非チェックしてみてください。
食費の定義
食費の平均をご紹介する前に、まずは「食費」とは何から何までを含む費用なのかを確認しておきましょう。
家計簿の「食費」欄に何を含めるかは家庭によって差がありますが、この記事で引用する総務省統計局の「家計調査 家計収支編」のデータでは、野菜や穀類、調味料などの自炊用の食料品のほか、菓子類や飲料、酒類、そして調理済みの食品や外食費なども「食費」の一部として扱われています。
つまり、この記事でいう「食費」とは、お酒や外食費用も含めて1カ月の飲食にかかる全ての費用ととらえていただけるとよいでしょう。
【世帯人数別】食費の平均
それではさっそく食費の平均を見ていきましょう。まずは、世帯人数別のデータです。
これ以降、記事内で紹介しているデータは、他に記載が無い限りいずれも総務省統計局が毎年実施している「家計調査 家計収支編」の2020年の結果をもとにしています。(参考:家計調査 家計収支編 総世帯 2020年度)。
一人暮らしの場合
一人暮らし、すなわち世帯人員が1人の世帯の毎月の食費の平均は38,257円でした。つまり、1日平均1,200円~1,300円程度ということになります。
二人暮らしの場合
世帯人員が2人の家庭では、毎月の食費は平均66,543円でした。一人暮らしと比べると3万円近く多い結果になっています。
三人家族の場合
世帯人員が3人の家庭では、毎月の食費の平均は78,155円でした。2人暮らしとの差は1万円強となっており、一人暮らしと二人暮らしを比較したときほどは差がないことがわかります。
四人家族の場合
世帯人員が4人の家庭では、毎月の食費は平均87,071円でした。三人家族との差は1万円を切る結果となっています。
ここまでにご紹介した世帯人数別の食費の平均をグラフにすると、次のようになります。
人数が増えるに従って食費も高額になるのは納得ですが、1人増えるごとに生じる食費の差額は、世帯人数が増えるに従って小さくなっていることがわかります。
【職業別】食費の平均
世帯の人数が食費を大きく左右することはデータから確認できましたが、その他にはどんな要素が関係しているのでしょうか。まずは、学生と社会人で食費に差があるのかみてみましょう。
ここでは、比較しやすいように、一人暮らしの大学生と未婚の社会人を想定したデータを使用しています。
学生
総務省統計局が実施する家計調査は、学生の単身世帯を除く世帯を対象に行われているため、学生の食費についてはデータがありません。そこで、独立行政法人日本学生支援機構が隔年で実施している「学生生活調査」の結果から、学生の毎月の食費の平均を計算してみました。
大学昼間部に通う学生のうち、下宿やアパートなどで暮らしている学生の食費は、年間平均で284,600円。これを12で割ると、月々の食費は平均約23,717円となります。
先に紹介した一人暮らし全体の平均38,257円とはかなりの開きがありますが、この調査では食費の他に「娯楽・し好費」という分類もあるため、一般的に嗜好品とされるお酒代が食費に含まれていない可能性が考えられます。
(参考:平成30年度学生生活調査)
社会人
一人暮らしの社会人の食費は、家計調査の単身世帯のデータで紹介されています。単身世帯のうち、社会人にあたる「勤労者世帯」の食費は、月平均40,235円となっています。
先に紹介した学生のデータに酒代が含まれていない場合を想定して、比較のためにここから酒類の平均2,272円を引くと、37,963円となります。それでも学生とは14,000円以上の差があるため、学生と社会人では食費に大きな差があると言ってよさそうです。
学生の場合は安い学食を利用できるほか、アルバイト先で賄いが出る場合などもあるため、費用を抑えやすいのかもしれません。
【年収別】食費の平均
学生と社会人で食費に大きな差があるということは、年収によっても食費に顕著な違いが現れるのでしょうか。そこで、次は年収別に食費の平均を比較してみました。
ここでも、比較しやすくするために単身世帯のデータを使用しています。
100万円未満
年収100万円未満の単身世帯の毎月の食費は、平均29,854円でした。先に紹介した学生の平均23,717円と比較的近い数字になっています。
100~200万円
年収が100万円から200万円の単身世帯では、毎月の食費は平均31,476円です。年収100万円未満の世帯との差はあまり大きくなく、目立って増えている費用の項目も見られませんでした。
200~300万円
年収が200万円から300万円の単身世帯の毎月の食費は平均38,427円と、単身世帯の全体平均38,257円とほぼ同等の金額となっています。年収100万から200万円未満の世帯と比べると、約7,000円という大きな差があります。
年収100万から200万円未満の世帯と項目ごとに詳細に比較したところ、全体的に増加してはいますが、外食費で約2,400円、調理食品で約2,000円と特に大きな増加が見られました。家計に余裕が出ることで、自炊よりも手軽な調理食品や外食を利用する機会が増えたと考えることができそうです。
300~400万円
年収300万円から400万円の場合、単身世帯の毎月の食費は平均40,653円でした。
年収が200万円から300万円の世帯と比べると、外食費が5,000円近く増加して初めて1万円を突破する一方で、穀類や魚介・肉類、野菜、果物、調味料など自炊用の食料品にかける費用が軒並み減少しています。この結果から、自炊の機会が減って外食が増えるというライフスタイルの変化が起きていることが読み取れます。
400~500万円
年収400万円から500万円の単身世帯では、毎月の食費の平均が43,659円となっています。年収300万円から400万円の世帯と比較すると、先ほどと同様に自炊用の食料品にかける費用が軒並み減少しています。その代わりに外食費が4,000円以上増加し、調理食品にかける費用も600円程度増加しています。自炊の機会がさらに減って、調理食品や外食を利用する機会が一層増しているのでしょう。
500~600万円
年収が500万円から600万円の単身世帯では、毎月の食費は平均43,707円となっており、年収400万円から500万円の世帯とほとんど差がありません。
項目別に比較してみると、外食費が2,000円近く減少しています。さらに、ここまで年収と比例して一貫して増加傾向にあった酒類にかかる費用が、初めて減少に転じています。
一方で、調理食品の費用が2,000円以上増加し、魚介加工品の費用も400円近く顕著に増加していることに加え、生鮮野菜の費用が500円以上減少していることからも、外食を控えながらも自炊が増えているわけではなく、調理済みの食品や加工食品を利用する機会が多くなっていることが伺えます。
600万円以上
対象となる世帯数が限られているため、この調査では年収600万円以上の世帯が1つにまとめられています。このため実際には世帯毎の差が大きいことが予想されますが、この年収レンジの単身世帯の食費は月平均51,600円となっています。
年収500万から600万円の世帯と比べて、全体的に増加しているものの、外食費が2,000円ほど増えているほか、酒類で800円弱、酒類以外の飲料で1,000円以上、菓子類でも1,000円以上、そして野菜・海藻で1,200円弱と、一部項目でとりわけ大きな増加が見られました。唯一減少しているのが調理食品にかかる費用であったことからも、他の年収レンジとは違った生活習慣の変化が現れていると言えます。
【男女別】食費の平均
食費は基本的に年収と比例して増加する傾向が確認でき、特に年収レンジによって自炊の頻度に差がありそうだということがわかりました。それでは、男女別で見るとどうでしょうか。ここでも、家計調査の単身世帯のデータを使って比較してみましょう。
男性
単身男性の毎月の食費は、平均42,165円です。単身世帯の全体平均である38,257円と比べて4,000円近く高い数字になっているため、全体的に男性が平均を引き上げていることが予想されます。
女性
単身女性の月々の食費は平均34,850円であり、男女では7,000円以上という大きな差があることがわかりました。
特に外食費で5,000円以上、調理食品で4,000円以上、そして酒類でも2,000円近く男性の支出の方が多くなっています。反対に穀類や魚介・肉類、野菜、果物、調味料など自炊用の食料品にかける費用は軒並み女性の方が高く、男女で食生活のあり方が大きく異なることがわかります。
【食費の種類別】平均
ここまで、食費の傾向を説明する中で、自炊や外食、そして調理食品などに触れてきましたが、これらは「内食・外食・中食」という食費の分類に対応するものです。最後にこの分類別の平均をご紹介します。
内食・外食・中食とは
「外食」という言葉は一般的に使われますが、「内食」や「中食」は初めて耳にする人もいるのではないでしょうか。
「内食」は、「ないしょく」または「うちしょく」と読みます。外食と対になるものであり、購入した材料を使って自宅で調理したものを食べることを指します。すなわち、一般に自炊と呼ばれる食事の取り方が「内食」にあたるものです。
「外食」とは、一般的に使われるとおり、レストランなど家の外へ出かけて食事をすることを指します。
残る「中食」とは、内食と外食の中間にあたるもので、調理済みの食品を購入し、家で食べることを指します。これには、スーパーやコンビニ、デパ地下、弁当屋などで惣菜や弁当を購入して食べることのほかに、宅配ピザなどのデリバリーサービス、そして自宅などで調理をしてもらうケータリングサービスの利用も含まれています。
内食
ここでは、内食にかかる毎月の費用として、家計調査の項目のうち穀類、魚介類、肉類、乳卵類、野菜・海藻、果物、油脂・調味料の合計額を使用します。これには、外食や調理食品、菓子類、飲料、酒類などは含まれません。
内食費用の総世帯の平均は32,410円ですが、世帯人数別で見ると次のようになりました。
外食2人世帯では単身世帯の倍以上となることから、一人暮らしでは相対的に食事全体に占める内食の割合が低いことが想像できます。
外食にかかる費用は、総世帯平均で見ると8,865円ですが、世帯人数別にまとめると次のようになります。
中食外食費は1人世帯の方が2人世帯よりも高くなっており、先ほど見えてきた傾向のとおり、単身世帯は内食が少なめで外食が多めの傾向にあることがわかります。
中食にかかる費用として、家計調査の「調理食品」の項目の金額をご紹介します。
総世帯平均は9,458円ですが、世帯人数別に見ると次のようになります。
エンゲル係数の平均中食の費用は、世帯人数に比例して増加する傾向にあるようです。
エンゲル係数の平均
食費について考える時には、日々の消費に占める食費の割合を表す「エンゲル係数」を計算すると便利です。エンゲル係数についてはこちらの記事で詳しく解説していますが、「所得が高くなるにつれ、エンゲル係数は低くなる」という有名な法則をどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。
実際に、先に紹介した2020年家計調査の単身世帯の年収別データを見てみると、年収が上がるにつれてエンゲル係数の値が小さくなる傾向が確認できます。単身世帯のエンゲル係数の平均は25.4%ですが、単身世帯に限らず全体で見ると、日本のエンゲル係数は平均27.0%となっています。
(参考:家計調査 家計収支編 2020年度)
エンゲル係数の平均値についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
理想的な食費はどれくらい?
エンゲル係数は、理想的な食費がどのくらいかを計算するための基準として使うことができます。一般的に、20%程度が理想とされることが多いようです。
エンゲル係数は、食費÷消費支出総額という簡単な式で計算できます。このとき、分母の「消費支出」は、いわゆる「手取り」の収入、つまり額面の収入から税金や社会保障費等を差し引いた額から、さらに貯蓄額を引いたものを指します。
つまり、自分の手取りから毎月の貯蓄額を引いた金額に20%を掛けて算出した金額が、あなたの理想の食費ということになります。
食費を節約するコツ
食費が理想の水準を超えている人や食費を今よりも切り詰めたい皆さんのために、最後に食費の節約のコツをいくつかご紹介します。
できるだけ自炊する
男女の食費の差に顕著に現れていたとおり、頻繁に自炊する人の方が、食費が安く済む傾向があります。つまり、自炊の回数を増やすことが節約への近道と言えるでしょう。
平日は忙しくて時間が取りにくいという人は、まずは週末に作り置きすることから始めてみてはいかがでしょうか。たとえば、カレーなど簡単なものを大鍋でまとめて作り、一食分ずつ小分けにして冷凍しておけば、残業後に疲れて帰宅しても、電子レンジで解凍するだけで簡単に食べることができます。
コンビニでなくスーパーで買い物をする
自炊はハードルが高いと感じる人は、買い物する場所を見直してみると節約につながるかもしれません。食料品は、コンビニよりもスーパーの方が販売価格は安い傾向にあります。特に、日常的にコンビニに行くのをやめ、スーパーで特売の時にまとめ買いしたり、定期的に業務用スーパーまで買い出しに行ったりすれば、かなりの節約が期待できるでしょう。
ご飯は家で炊く
お弁当などの調理済み食品は、主食が含まれているかどうかでかなり値段が変わってきます。ご飯を家で炊いておかずだけを購入するようにすれば、無理なく節約ができるでしょう。
また、ある程度の期間保存のきくレトルト食品のおかずをまとめ買いしておいて、家で炊いたご飯と一緒に食べるようにすれば、外食やコンビニ弁当頼りの生活よりもずいぶんと食費を節約できるはずです。
この記事では、世帯人数や職業、年収、性別など様々な観点から食費の平均をご紹介しました。あまり耳馴染みのない「内食」、「中食」という言葉も紹介しましたが、食費を節約したい人は、内食・外食・中食という3つの種類別に食費を把握し、どこを優先して削るべきかを検討してみるのもいいかもしれません。
飲食にかかる支出が自分にとって適正な金額におさまるよう、エンゲル係数などの指標も参考にしながら、記事の最後で紹介した節約のコツをぜひ試してみてください。