自分が住民税をいくら払っているか、気にしたことはありますか?給料から天引きされている場合はそれほど気にならないかもしれませんが、無職になったときは別。収入がないにもかかわらず、住民税を請求される場合もあるからです。
この記事では、住民税の仕組みや無職でも支払わなければならない理由、免除・減額の条件などについて詳しく解説します。
住民税の仕組み
住民税は地方税のひとつで、自分の住所がある都道府県や市区町村に支払う税金です。
個人が負担する「個人住民税」と企業などの法人が負担する「法人住民税」がありますが、この記事では個人住民税について説明していきます。
個人住民税は、都道府県民税と区市町村民税の総称です。納めた住民税は、ゴミ処理や消防、救急、教育などの公共サービスを賄うために使われます。
しかし、同じ地域に住んでいても、人によって納めるべき住民税の額は異なります。では、住民税の税額はどのようにして決められているのでしょうか。
個人住民税には誰もが同じ額を負担する「均等割」のほか、前年の所得に応じて金額が変わる「所得割」が設けられています。たとえば、東京都の場合、令和3年度個人都民税の均等割税額は1,500円、個人区市町村民税の均等割税額は3,500円となっており、合計5,000円を個人住民税として納める必要があります。
この金額に、個人の所得に応じて所得割の金額が加わります。同じく東京都の場合、令和3年度の税率は都民税4%、区市町村民税6%とされているため、所得の10%を個人住民税の所得割税額として納めなければなりません。つまり、5,000円に所得の10%を加えた金額が最終的な個人住民税の納税額となります。
ただし、このほかにも、利子割や配当割、株式等譲渡所得割など、収入の種類に応じても住民税が加算されていきます。また、所得が少ないときは調整控除額が発生し、住民税が安くなることもあるため、個人住民税は毎年同額ではなく、同じ地域に住んで、同じ仕事を続けている人でも金額が変わる可能性があるのです。
(参考:東京都 江東区役所│住民税の税率・計算例(その1))
無職でも住民税がかかるケースとは?
仕事を続けている間はそれほど気にすることもなかった住民税も、無職になれば途端に重くのしかかってきます。ここでは、収入がゼロになっても、住民税の請求書が届いてしまう理由について見ていきます。
退職後
住民税の税額は前年の所得に応じて計算されているため、退職して無職になった人でも、退職した翌年の住民税は支払わなければなりません。
通常、1月〜5月に退職した場合は、給与から住民税が一括で天引きされています。6月~12月に退職したときは住民税の未納分を自分で支払うか、最後の月の給与から一括で差し引くかを選択できるほか、もしすでに転職先が決まっている場合は、転職後の給与から天引きしてもらうことも可能です。
退職前の所得が多かった人は住民税の税額が高額となるため、退職後に住民税の支払いに困ってしまう場合もあるでしょう。そんなときは、後ほど紹介する分割納付を利用するのも一つの手です。
(参考:岐阜県 瑞浪市役所│市民税、バイトルマガジン BOMS│【税理士監修】退職後の住民税はどうなる?辞めた時期による納付方法の違いとは)
死亡時
住民税の対象者が亡くなった場合でも、前年に所得があれば税金は発生します。本人がまだ住民税を納めていなかった場合は、遺族が払う必要があるため注意してください。
(参考:東京都 江戸川区役所│亡くなられた方の住民税について)
雑所得がある
無職になっても、副業や家賃収入、年金などで雑所得がある場合には住民税が発生します。
所得税の確定申告をしている場合は自動的に住民税が計算されますが、所得税の確定申告を行っていない場合は、雑所得などの金額に関係なく「市民税・県民税申告書」を提出しなければなりません。
所得税が0円でも住民税が発生することも!
所得税が0円の場合も、住民税が発生するケースがありますが、これは所得税の控除金額と住民税の控除金額に差があるためです。
たとえば、所得金額が48万円の人の場合を考えてみましょう。所得が2,400万円以下の場合、令和3年度の住民税基礎控除は43万円、所得税の基礎控除は48万円とされているため、所得税と住民税の課税対象額は下記のように計算されます。
48万円(所得)-48万円(所得税基礎控除)=0円
48万円(所得)-43万円(住民税基礎控除)=5万円
このように、控除額の違いによって、最終的な課税対象額に差が生じるため、所得税が0円でも住民税が発生する場合があるのです。そのため、無職になって所得税が0円の年でも、住民税の金額確認は忘れないようにしましょう。
(参考:国税庁│No.1199 基礎控除、東京都 渋谷区役所│令和3年度住民税の税制改正のお知らせ)
住民税が免除・減額されるケースとは?
住民税は、所得や生活の状況によっては免除や減額となる場合があります。申請すれば住民税の負担を軽減できる可能性があるため、いざという時のために覚えておくといいでしょう。
生活保護を受けている
生活保護を受けている人は、均等割と所得割がともに全額免除になります。
(参考:東京都 狛江市役所│市民税・都民税の減免制度とは?)
前年の所得が一定額以下
前年の所得が、各自治体の定める額よりも少ない場合、均等割と所得割がともに全額免除になります。基準となる金額は、扶養親族や控除対象配偶者の有無によって異なります。
(参考:東京都 港区│減免について)
失業保険を受けている
失業保険は非課税所得のため、住民税の課税対象にもなりません。失業保険のほかに収入を得ていない人であれば、住民税が減額される場合があります。
(参考:鹿児島県 鹿児島市役所│個人住民税)
災害に遭ったとき
災害で家屋などを失い、住民税の支払いが困難になる場合もあります。被災の程度によっては住民税が減額・免除される可能性があるため、困ったときは地方自治体の窓口に相談してみましょう。
(参考:東京都 八王子市役所│ 税金)
住民税を払えないときはどうする?
「収入が少なくて住民税を払うことができない。」そんなときでも、住民税の請求書を見なかったことにしてしまうのはおすすめできません。なぜなら、住民税を支払わないデメリットの方が大きいからです。
住民税を滞納すると?
住民税を滞納すると、本来納めるべき税額に延滞した期間に応じた延滞金を上乗せして支払わなければなりません。この延滞金は、住民税をすべて納めるまで年単位で増えていくため、早めに納めた方が良いでしょう。また、住民税の滞納が続くと、財産を差し押さえられてしまうおそれもあります。
居住地域によっては電話や訪問による納付案内も実施しているため、不明点があればすぐに相談してみましょう。
(参考:神奈川県 横浜市役所│市税の滞納)
分割納付できる場合もある!
住民税を期限までに全額納めることが難しい場合は、居住地の窓口で分割納付の相談をしてみましょう。年度内までの分割納付を受け付けてくれるほか、生活状況によっては長期の分割納付許可が出る場合もあります。
申請をしておかなければ滞納とみなされてしまうため、経済状況が厳しくなったときは早めに相談することをおすすめします。
分割納付手続きをしたタイミングによっては、行き違いで督促状が届いてしまうこともありますが、きちんと手続きをしておけば焦る必要はありません。落ち着いて、新たな納付期限までに住民税を支払いましょう。
(参考:東京都 葛飾区役所│税金に関する相談)
住民税の申告方法・納付方法とは?
最後に住民税の申告方法や、納付方法などをご紹介します。
課税対象でなくても申告をしよう!
所得が少なく、住民税の課税対象にならない人でも、申告をしておくことで保険料や医療費が減額されるなどのメリットを得られる可能性があります。
会社では住民税などの手続きを年末調整で行ってくれていましたが、無職になったら自分で手続きをしなければなりません。忘れずに役所窓口などで手続きをしておきましょう。
(参考:神奈川県 横浜市役所│市民税・県民税の申告について)
住民税の申告に必要なもの
住民税を申告するときは居住地が指定する申告書のほか、源泉徴収票や給与明細書といった収入のわかる書類、所得控除の領収書や明細書、そしてマイナンバーと本人確認書類が必要です。
(参考:東京都 江戸川区役所│令和3年度特別区民税・都民税申告について)
住民税の申告先・納付先
住民税の申告先は居住地の税務課です。申告書は窓口で提出できるほか、郵送やインターネットで送ることもできます。書類の記入方法がわからないときは、一度窓口や電話で相談してみるといいでしょう。
また、住民税の納付は役所の窓口だけでなく、金融機関やコンビニエンスストアのレジなどでも行うことができます。さらに、納付書にPay-easy(ペイジー)の番号が記載されていれば、ATMやインターネットバンキングでも支払いが可能なほか、居住地によってはクレジットカードでの納付も受け付けているため、窓口に行くことが難しいときは利用してみてもいいでしょう。納付方法は居住地によって違いがあるため、自治体のホームページなどで確認してみてください。
(参考:東京都 練馬区役所│特別区民税・都民税(住民税)の申告について)
都道府県民税と区市町村民税の総称である個人住民税。一律で課せられる均等割と所得に応じて加算される所得割で構成されており、無職になった場合でも前年の所得をもとに税額が決まります。
住民税を滞納することによるデメリットは非常に大きいため、支払いが困難になったときは放置せず、居住地の税務課に早めに相談しましょう。