植物の力を使って心と体の不調に寄り添う“植物療法(フィトテラピー)”。その第一人者であり、フェムケアの啓発にも長く取り組んできた植物療法士・森田敦子さんが主宰するオンラインサロン「翠耀の間―まばゆいほどの光がさす現代の茶の湯―」では、科学的根拠に基づいたフィトテラピーの知識を使ったセルフケア情報を日々、発信しています。
今回は森田さんにオンラインサロンへの想いのほか、睡眠・肩こり・冷え・月経・気象病などのお悩み別に今日から実践できる“ハーブと精油の選び方” をお聞きしました。毎日の暮らしにそっと取り入れられる、やさしいセルフケアのヒントをお届けします。

植物療法士/フェムテイスト
客室乗務員時代に植物療法に出合い、フランス国立パリ13大学で植物薬理学を本格的に学ぶ。パリからの帰国後は、植物療法に基づいた商品とサービスを社会に提供するため会社を設立。フェムテックの先駆けとなるフェムケアの啓蒙活動も行う。2022年、日本女性財団理事に就任。女性誌「ELLE」にて、「100
Women CHANGE MAKERS (エルが選ぶ世界のチェンジメーカー100)」に選出。近著に「ベスト・オブ 自然ぐすり – 体と心の不調と予防に」(ワニブックス)。
フィトテラピーとの出合いと研究を志した理由

――植物療法(フィトテラピー)は、植物の薬理効果を使って人が持っている自然治癒力に働きかける自然療法ですよね。森田さんがフィトテラピーを学び始めたきっかけを、改めて教えてください。
客室乗務員として働いていた20代のころに、自己免疫疾患を患ったことがきっかけです。当時はバブル期で「24時間働けますか?」という時代。ものすごく働いて、遊んで、また働くというスピード感が当たり前の社会で体調を崩してしまったんですね。なかなか治らず、子どもも難しいと言われたこともあって正直逃げ出したい気持ちもあったんですけど、もしかしたら改善するかもしれないとヨーロッパに薬草学を学びに行こうと決めて一念発起。パリ13大学医薬学部で、解剖学や自然療法を学び始めたんです。
当時、日本ではまだエッセンシャルオイルも知られていなかったですし、ロハスやオーガニックという概念もなかった時代。薬草学や漢方についても、ほとんど語られていないときでした。
――フィトテラピーを学び、それを実践したことでどんな影響があったのでしょうか。
体調が戻ってきたのはもちろんですが、薬の副作用で抜けていた髪の毛や生理も少しずつ回復していきました。難しいと言われていたのに、40代で自然妊娠することもできました。植物化学を勉強することの重要性を体感したこともありますが、ヨーロッパでは植物の成分の科学的な構造が、医学や調剤の分野で当たり前に使われているんですね。そういったことを日本にも広めたいと思うようになりました。
大学ではフェムケア(女性のセルフケア)やセクソロジー(性科学)の勉強もしていたので、その分野についてももっと知識を伝えたいという気持ちが強くありました。当時の日本では、性のことは「見ない・聞かない・触らない」という雰囲気でしたが、本当は食事や睡眠と同じように性の健康も体を整えるうえで欠かせないもの。植物療法もそういった要素と深く関わっていて、そういった知識を持つことが女性のエンパワーメントにつながると感じていました。
――2024年秋には、中目黒にフィトテラピー&フェムケアの体験型ウェルネスショップ「ルボア エクラ(LE BOIS ÉCLAT)」もオープン。今は、こちらが活動の拠点になっているのでしょうか。

そうですね。ショップを軸に、フィトテラピーを学ぶスクールや植物の研究に力を入れています。サイエンスなくしてフィトテラピーやアロマテラピーはないと思っていますから。信州大学の農学部や大阪大学の工学部の先生方と一緒に研究をさせていただいています。こういう化学構造だから眠りにいい、肩こりの痛みが和らぐといったように、科学的な根拠に基づいたものを商品やサービスとして提供したいと考えています。
――フィトテラピーには“ふんわりとしたイメージ”を持ちがちですが、科学的な根拠を大切にされていると聞くと安心できる人も多いのかなと思います。
「いい香りだから」「今日選んだ香りが今日のあなたに必要です」といったことは一切言いません。スクールでも大学と提携するなど、科学的なことを徹底的に教えています。
フィトテラピーを知れば、もっと自分をケアできる

――フィトテラピーの魅力は、どんなところでしょうか。
さまざまな魅力がありますが、フィトテラピーを知っていると“自分の体の変化に耳を傾けて、きちんと養生しよう”という姿勢を持てるようになる、ということではないでしょうか。日本の女性は本当に優秀なのに、どこか自信がなくて、つい「人のため」「会社のため」と自分を後回しにしてしまう方が多いですよね。自分が満たされていないのに、誰かのために頑張り続けてしまって、気づけば疲れ切ってしまう。月経痛やPMSがあっても無理して働き続けることで、最終的に体調を崩してしまうケースも少なくありません。
フィトテラピーの知識があれば、眠れないときや月経痛などの不調に合わせてハーブを取り入れることができます。無理をしすぎないように体のサインを受け取り、「今日は休もう」「自分をケアしよう」と自然に思えるようになる。そんなふうに、自分をいたわる習慣が身についていくのかなと思います。
――不調を感じたときに我慢するのではなく、まずフィトテラピーでケアできると病気の予防にもつながっていきそうですね。
フランスには、エルボリステリア(薬草薬局)があり、通常の薬局にもフィトテラピーの製品が置かれているんですね。何かおかしいと感じたら、まずは植物でケアをするのがごく自然な習慣ですが、日本では熱や痛みがあるとすぐに薬を飲む方が多い。でも、本来それは体からのサイン。どこかに炎症があるから熱が出るのであって、その原因を見きわめずに薬で症状だけを抑えてしまうと、本当は何が悪かったのか分からなくなってしまいます。
頭痛ひとつとっても、頑張りすぎなのか、冷えなのかで対処法は変わりますよね。そういう原因を自分で見きわめられるようになること。薬はあくまで症状を止めるものですが、フィトテラピーは私たちが本来持っている自然治癒力に働きかけるもの。その力をうまく活用することで、根本的な解決につながると考えています。そのうえで、マイ内科やマイ婦人科といったように、自分にあったクリニックの先生を見つけることも重要です。
日常で使えるフィトテラピー:悩み別・ハーブ&精油の選び方

――そんなフィトテラピーの第一歩として、お悩み別に「今日から実践できる“ハーブと精油の選び方”」を教えていただければと思います。まずは、睡眠不足におすすめなハーブを教えてください。
バレリアンとパッションフラワーというハーブがいいんじゃないかな。寝る前に飲むのがおすすめです。ハーブは基本的に空腹時に飲むのがいいですよ。食べたものは肝臓で成分に変換されていくんですけど、食べたものの消化が最優先で機能成分の摂取は後回しになっちゃうんですね。だから、食後少し経ってから飲む方がいいと思います。
――では、肩こりにおすすめなものは?
肩こりだったら、エッセンシャルオイルでウィンターグリーンがおすすめです。ウィンターグリーンは主成分がサリチル酸メチルという成分なのですが、このエッセンシャルオイルを植物油に1.2滴落として肩の凝ったところに塗る。局所治療と言うんですけど、痛みが40分ぐらいで取れると思います。天然の湿布薬ですね。
――今の時期、女性が悩みがちな冷え性にはどうでしょうか。
10月に発売した『ベスト・オブ 自然ぐすり – 体と心の不調と予防に』という本にも書きましたが、ハーブだったらポリフェノールが含まれているヴァンルージュという赤ブドウの葉。あとは、ギンコビロバというイチョウの葉のエキス。ショウガも体を温めてくれますね。

――月経トラブルにおすすめなものは?
チェストベリーとメリッサですね。「ルボア エクラ」の店頭にも置いてありますが、エストロゲンとプロゲステロン、それぞれに働きかけるハーブをブレンドさせて取るといいと思います。月経痛やPMSだけでなく、更年期の不調も出にくくなりますから。体調を整えてくれる作用があるので、調子がよくなったと思ったら、いったんお休みして様子を見てもらえるといいのかなと。ずっと飲み続ける必要はありません。もしまた不調が出てきたら、そのときの生活習慣を振り返ってみてください。体を冷やしていないか、無理して働いていないか。そんなふうに続けていくうちに、自然と“養生すること”の大切さも分かってくると思います。
――最後に、最近悩む人の多い“気象病”。おすすめのものはありますか。
気圧配置での頭痛というのは、三半規管などの問題。フィーバーフューやエキナセアを取ると痛みがすっきりします。
不調を感じる日は誰にでもありますよね。でも、月経痛や冷えがなくて、“今日はちょっと頑張りすぎたな”と思った日に肩こりや腰痛をケアするくらいで十分な状態なら、毎日をもっとハツラツと過ごせると思いません?
――それが理想ですよね。
体が健康であれば、夢もかなえやすいと思うんです。私も還暦を迎えましたが、体が重くてだるいってほとんどないんですよね。そういう状態だと次の夢に向かって動けない。でも、その体を維持するためにはケアが重要になってくるわけで。20代で自己免疫疾患を患って、健康であることってそれだけで幸せだなと実感したところもありますが、皆さんにもフィトテラピーで自分のケア方法を知って健康で過ごしてもらいたい。そして、夢をかなえていただきたいなと思っています。
オンラインサロンで伝えたいこと――女性が自分らしく輝くために

――ここからは、DMMオンラインサロン「翠耀の間―まばゆいほどの光がさす現代の茶の湯―」についてもお聞かせください。
20代でフィトテラピーに出会って、40代で突然子どもができて。そのあと、更年期もなく還暦まで元気で過ごせているので、そういったライフスタイルの発信が中心ですが、今の自分がブレンドするなら…というハーブと、そのハーブのそれぞれの効能をお話したり、精油の使い方だったり。最近だと、葛湯の作り方とか。あとは、個人カウンセリングや皆さんのお悩みを聞くライブ配信などを行っています。
――会員の方は、もともとフィトテラピーに興味を持っていた方が多いのでしょうか。
そうですね。私が主宰するフィトテラピースクールの生徒さんもいらっしゃいますし、セミナーや講演会、著書で私のことを知って興味を持ってくださる方も。フィトテラピースクールに通うまでじゃないけど、簡単な知識を持ちたいという人も少なくないですね。
――今後、増やしていきたいと思っているコンテンツはありますか。
クローズドなところでもあるので、フェムケアについてもどんどん発信していこうかなと。性科学って日本だとあまり馴染みがないと思うんですけど、性というのは食と睡眠と同じくらい大事なもの。先日ミニセミナーを開催したところ、意外と需要が高いことが分かって。知りたいけど、どこで尋ねたらいいのか分からないというのが多いのかな。フィトテラピーはもちろん、フェムケアについても自分のヘルスリテラシーとして知っておくべきことだと考えています。

――オンラインサロンを通して、伝えたいことはどんなことでしょうか。
もっと勉強したいという方にはフィトテラピースクールを用意しているので、オンラインサロンはまず知ってもらう入口。生活の彩りとしてフィトテラピーに触れていただけるといいのかなと思っています。その代わり、スクールはかなり本格的です。フィトテラピーを使っていずれ独立ができるように、というところを目指していますから。
私の母も私の学校でフィトテラピーを学んだあと、実家で小さな教室を開きました。今88歳なんですが、妹と一緒にハーブを使った歯磨き粉やバーム作り。田舎だから黒豆品評会やラッキョウ作りなんかも一緒にやっていて(笑)。知識があれば高齢になっても毎日を楽しく過ごせるし、自分で収入を得ることができるんですよね。
私が本当に伝えたいのは、“自分で生きていく力”。もちろんフィトテラピーで健康を届けたい気持ちは大前提としてありますが、その先に自分の手で人生を切り開いていく女性を増やしたいという思いがあります。オンラインサロンでどこまでサポートできるかはまだ分からないですが、学んだことが誰かの未来の一歩につながる。そんな場になればうれしいですね。
――フィトテラピーやフェムケアが女性のエンパワーメントにつながるというのは、すごくすてきなことでもありますね。それでは、最後に改めてメッセージをお願いします。
「森田敦子のまずは自分から♡ supported by 自然ぐすり」というタイトルのPodcastもやっていますが、本当に「まずは自分から」なんですよね。まずは、自分をねぎらってあげて、慈しんであげること。そのための方法をオンラインサロンでは発信していきたいと思っています。今までの経験や知識を共有しながら、楽しんでライフスタイルを作り上げていく。それを皆さんと一緒に、というのが大事なのかなと。ワクワクする時間を一緒に作っていきましょう!



