管理栄養士として、一人ひとりの生活習慣や環境に合わせた“オーダーメイド”の食事指導を手がける梅原祥太さん。食事をやみくもに減らすのではなく、内容を改善することで、心身を健康に整えるダイエット方法を提案しています。
そんな梅原さんに、健康美人になるための食事をレクチャーしてもらいました。なんと、私たちが普段ヘルシーだと思っているあの食べ物が、本当はNGという事実も……!
今日からすぐに始められる、食生活改善のポイントをご覧ください。
健康的な体づくりには、一人ひとりに合わせた食生活が必要
―まず、梅原さんがオーダーメイドの食事指導を始めた経緯を教えてください。
梅原祥太:キャリアをスタートしたころは、精神科の病院で管理栄養士を務めていました。心や身体にさまざまな悩みを持って訪れる患者さんたちに、ベストな食生活を提案する仕事です。入院患者さんの食事はもちろん、外来指導もあって。そこには、間違った食事制限を重ねたすえに、心身を患う方々が少なくありませんでした。
でも、病院の食事指導は、発病してからがメイン。食事だけで根治を狙うことは難しいのが現状です。本当は、予防から取り組むことができれば、もっと違う結果が生まれるはず。それに、病院指導ではマニュアルの壁を越えられず、どうしても画一的な提案になってしまいます。病気になる前の日常生活から、一人ひとりに合わせた食生活のアドバイスが必要だと、強く感じるようになりました。
そこで始めたのが、オーダーメイドの食事指導です。形にとらわれず、その方の目標に合わせて、本当に必要な食生活を探っていく。ただ減量するのではなく、心身の健康を保ち、生活習慣病などの病気も予防できるようなダイエットを、日々アドバイスしています。
―世の中も“ガリガリではなく健康的にやせる”ことを推奨する方向になってきましたね。
梅原祥太:そうですね。相談に訪れる方のなかにも、体重だけで見れば「標準」「やせている」の範囲だけど、見た目を美しくしたい方が増えてきています。単純に食べなければ体重は減るけれど、筋肉量が減ってしまうから見た目は美しくなりにくいし、代謝も落ちる。
なにより、精神的によくありません。食生活を見直して、足りていない栄養素を増やすとか、必要以上に摂っているものを減らすとか、こまかいプラスマイナスを意識するのが大切なんです。
必要な栄養素をきちんと押さえつつ、摂取カロリーを減らす
―では、健康美人になる食生活のポイントを教えてください。
梅原祥太:大きく3つのポイントがあります。
1、 必要量のたんぱく質を摂る
体重や筋肉量に応じて厳密な必要量は変わるけれど、女性なら一日60~70gが目安です。たんぱく質は、肌や髪、筋肉、血液といった体のほとんどを作る栄養素。これが足りないと、筋肉が減って体のラインがゆるんだり、肌や髪が荒れるなど、見た目に響いてきてしまいます。
なので、食事の量を減らしても、たんぱく質の摂取量はキープすること。血液中の濃度を下げないよう、毎食少しずつ摂るのがベストです。肉や魚はもちろん、卵もOK。Lサイズの卵ひとつでたんぱく質は約7g、そこに納豆をプラスすれば約15gと、意外と簡単に摂取できます。
2、 質のよい脂質を摂る
ダイエットをするなかで、脂質には悪者のイメージがあります。でも、一日40~50gは摂りたい栄養素。脂質を削りすぎると、肌や髪は乾燥するし、女性の場合はホルモン分泌が乱れて生理がとまることも……。肉や魚、卵といった動物性の脂質を、きちんと摂るようにしましょう。
ただし、酸化しやすい植物性の油は極力避けて。良質な油は冷えや代謝を改善するけれど、酸化した油は逆効果になってしまいます。とはいえ、油の保存状態を見極めるのは難しいので、肉や魚などの動物性脂質をベースとするのが無難です。どうしても液体油を使うときは、オリーブオイルがいいですね。
3、 カロリーを意識する
減量を目的とする場合、消費カロリーよりも摂取カロリーを減らすことは鉄則。でも、カロリーばかりを気にしていると栄養が偏ってしまうので、不足しているものを補いつつ、不要なものは減らす必要があります。
また、カロリー計算は面倒な印象ですが、最近はWebサービスやアプリで簡単にカロリーが調べられます。毎食ごとにチェックするのが難しくても、食べたものを軽くメモしておいて、始めはとりあえず、一日の三大栄養素を確認するだけでもOK。数日頑張って記録すれば、自分がだいたいどんな食生活をしているのか傾向が見えてきます。そうすると毎回の記録をつけなくても、感覚で食事を調整できるようになり、ぐっと続けやすくなるんです。
グラノーラとスムージーは、本当は避けるべき!?
―ほかに、ダイエット初心者がやってしまいがちなNG例はありますか?
梅原祥太:やはり、糖質の摂りすぎですね。体にとって必要な栄養素のひとつではあるけれど、無駄なタイミングで摂りすぎているケースが多い。お菓子やジュースで糖質を摂ったから、食事をサラダだけにして調整する……なんてよく聞きますが、それではたんぱく質や脂質が足りていません。本来必要なものを減らして、なくてもいいものを摂ってしまっているわけです。お菓子のカロリーは調節できても、栄養バランスは調節できないので、注意が必要ですね。
―だんだん心が痛くなってきました……! では、みんなよく食べているけれど本当は避けるべき食べ物、なんてあったりするんでしょうか。
梅原祥太:グラノーラとスムージーです。もちろん、好きだから食べたり飲んだりしている場合は、両方ともOK。食生活のなかでは「お菓子」のカウントになるけれど、楽しく味わうならいいんです。でも、なんとなく健康によさそうだから……というイメージで続けているだけなら、やめたほうがいいと思います。
まず、グラノーラは、酸化しやすい植物油を使って作られているものがほとんど。ほぼ糖質のドライフルーツなどが入っているタイプは、さらに減点です。だいたいの方が牛乳をかけて食べると思いますが、牛乳もあまりよいものではないんですね。カルシウムは多いけれどマグネシウムが少ないので、意外と骨の強化にはつながらず、脂質や糖質のほうが気になってしまうんです。
スムージーは、野菜や果物からつくりますよね。果物はそもそもあまりダイエットに向かない食べ物。肝臓に直接送られて代謝されるので、すぐ脂肪になってしまい、エネルギー源にしづらいんです。脂肪肝の人って、毎日フルーツを食べていたりするんですよ。だから、野菜や果物を摂る目的のスムージーなら、ふつうに野菜サラダを食べるほうがいいんです。
―健康美人への近道だと信じていたグラノーラとスムージーが、そんな存在だったなんて……! でも、好きで食べているならOKと言ってもらえて救われました。最後に、これから食生活改善をしたいと考えている人にメッセージをお願いします。
梅原祥太:ここまでの記事を読んで、自分のしていることが間違っているとショックを受けた方もいるかもしれません。でも「キレイになる」「体を引き締める」といった目的を持って、すでに動き始めている方は、なにも間違っていないんです。目標に向かって努力できるなら、あとは正しい方向性にシフトするだけ。日常の範囲でできることや生活習慣に合わせて、ベストな方法を探っていきましょう!
オンラインサロン『梅原祥太の健康美人になるサロン』では、さまざまなダイエット・栄養の知識を紹介。メンバーが投稿する食生活の記録に対し、梅原さんが詳しいフィードバックをする「オンライン食事指導」も盛り上がっています。さかのぼって読むだけでも、美しい体を作っていくための知見がたくさん得られるはず。“健康美人”を目指す方は、ぜひチェックしてみてください。