オンラインサロン「ギガ盛りブログ飯 ~発信力を身につけて時代を楽しく生きる術を教えます」の主宰者・染谷昌利さんが、新刊本『複業のトリセツ』を9月28日に発刊されました。それを記念して、本書内のインタビューにも登場する3名のゲスト、サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部 サイボウズ式編集長の藤村能光さん、株式会社ドリップ CEOの堀口英剛さん、同社COOの平岡雄太さんと共に「複業の今と未来」をテーマにしたトークセッションが開催。その様子を前編、中編、後編の3本に分けてお届けします。
副業が認められた会社で、本業にどう取り組むべきか
ドリップ・堀口英剛さん(以下、堀口):サイボウズさんが副業を認めて、むしろやった方がいいよって推奨され始めましたが、僕らのいた大手メディアも副業は推奨しています。そうすると、副業ばっかりやる人が増えてくる、全然仕事してないように見える人が、ちらほら出始めたんですね。そういうのって、サイボウズさんでは起きなかったのか、どう対処されているのか教えていただけますか。
サイボウズ・藤村能光さん(以下、藤村):私が見ている編集部では、複業に力を入れすぎて本業がダメになるというのは、あんまりいないですね。これはサイボウズの経営スタイルに紐づいていると思うんですけれども、やっぱりチームワークの会社なんですね。サイボウズのビジョンは、「チームワークあふれる社会を作る、チームワークあふれる会社を作る」です。
その中で、本業をおろそかにして、複業ばっかりしている人がいたとします。するとチームで一緒に仕事をしているメンバーに対する信頼度が下がるはずなんですね。この社内の信頼度が、評価制度に入っています。副業ばっかりやっていて本業がおろそかになっている人は、チームのためじゃなくて、自分のために仕事をしてしまうことになるかもしれません。それでは、社内の信頼度は上がっていきません。
もう一個は、情報共有の会社なので、複業してることも含めてあらゆることをグループウェアを使って、共有しているんです。隠してやる複業は信頼を損なうんですけども、会社が複業をOKとしているのだから、オープンにした上で、「私は今、こういう働き方をしてる」と伝えて、チーム内で共感してもらうようにしています。
堀口:すごい!オープンにするのすごく大事ですね。それができていないと、やっぱり信頼感を損なってしまいますよね。
藤村:それこそ堀口さんも、最初に就職されたときに「複業がしっかりやれることが基準」と伝えていたので、会社も理解した上での採用だったと思います。特にチームの中での信頼関係が構築されている状態を維持するのが、重要かもしれないですね。伝えるって大事ですね。
優秀な人の能力はシェアする時代に
著者・染谷昌利さん(以下、染谷):(今日来ている方の中で)会社員の方が約半数いらっしゃったと思うんですけど、副業OKだよって、明示している会社に勤めている方ってどのくらいいらっしゃいますか。
会場:(複数人が手を挙げる)
染谷:おそらく時代的には、副業OKの流れに行かざるを得ないはずです。人口が減っていって、働く人の能力をシェアして行かないと、会社は厳しいんだろうなと思います。
藤村:優秀な方ほど、縛られるところにはいたくなくなると感じてます。自分を解放して、それでも会社は受け入れてくれて、対等な個人と会社の関係性を作れるところに結果的に、いい人が集まってくる環境が理想的です。
司会:副業OKとは言われつつも、例えば今自分が携わっているサービスの競合となるような部分に関しては、ジョインできない場合などありますよね。そういういった人でも、今からできる、副業を始めるための種まきとして、何かアドバイスはありますか?
ドリップ・平岡雄太さん(以下、平岡):会社のルールを超えることはできないとは思うんですけど。やっぱり自分の本業でしっかりと成果を出すことは最低限すべきだと思います。あとは、自分がしたいことを伝えていくのが大事だと思いますね。「急にこれ始めます!」と言うと会社としてもちょっと心配ですが、自分はライフプランとしてこういうことをしたくて、それは副業とか本業とか関わらずに携わっていきたい。会社でも成果を出すし、副業としてもやりたいですっていう流れで話していると、だんだん理解が得られるかなって思います。
そこまで伝えていても会社で何か動いてくれないのであれば、個人で動くのもやむを得ないというか、そのメッセージは前から伝えていましたよねっていう形で、少しずつ交渉する余地を創っていくことも大切だと思います。YESかNOか、1か0だと、なかなか皆の理解を得難いと思うので、ゆっくり崩していくのが大事ですね。
“お金を稼ぐ”という考えを捨ててみる
堀口:あと、いきなりお金を稼がなくても良いと思っています。お金稼ぐと会社や税務署に申請が必要になるので、まずは趣味の範疇でやってしまえばいいんです。趣味であれば会社も特になにも言いません。そこで人脈など、ある程度の下地を作った状態にしておいてで、これはもうお金になるなと思ったら会社を辞める、あるいは会社に相談してみる。このパターンが周りにも多かったですね。
僕らも、大手メディアの広告営業をしていた頃はルールがあって、同じ広告部分の副業はNGだったんですね。ですから、その辺はあまりタッチできなかったんですけど、独立をしてから広告営業で積み上げた人脈がめちゃめちゃ活用できています。会社員のうちに、お金稼がず好きなことをどんどんやって、下地固めちゃうっていうのが、一番いいんじゃないかなって思いますね。
司会:なるほど。お金を稼がなければいいっていうのは新しい考えですね。
平岡:副業で稼げるのはお金だけだと考えている人もいるかもしれないですけど、信頼とかの方が大きいと個人的には思っています。辞めた直後から副業がきっかけで知り合った方やいろんな人が応援してくれました。染谷さんも、本業では全然知り合わない方なので、そういった方に、貴重な機会を与えてもらっています。お金だけじゃなく、信用とか、トータルで何を稼ぐかみたいな考えが、すごく大事かなと思います。
染谷:そうですね、お金稼ぐっていうと仰々しくなっちゃいますが…、僕の周りにはカメラを恐ろしい勢いで買う人たちが多いんです。例えば僕が、「子供の運動会のために、初心者でも手ブレしないで撮れる一眼が欲しい」という状況時に、そのカメラを買うのが趣味の人たちに相談すればいいわけですよね。そうすると、嬉々として説明してくれて、良いところとか、悪いところとかも全部教えてくれる。こっちは嬉しくて、じゃあご飯奢るよとか、現金以外の謝礼をすることも多いです。。そういったことも多分できますよね。
これって、多分副業も同じところがあって、お金を発生させるか・させないかっていうのは後から考えればよいと思っています。カメラ詳しい人とか、Excel詳しい人とかなんでも良くて、そういったところで、人間関係とか、信頼関係とか、実績とか作っておくということも重要だとと思いますね。
個人で活動すること=すべての責任を自分で負うこと
司会:複業をしていて、これはすごく大変だったという点、ありますか。
平岡:『複業のトリセツ』にも書いてあったように、インターネットを使った複業っていうのが、主流になってきていて、便利な反面一歩使い方を間違えると、多くの人に誤った情報が拡散されたりとか、予想外の批判を受けたりと、情報発信はすごく難しいと改めて感じています。。
会社の仕事であれば批判を受けても上司のフォローがあったり、会社が守ってくれたりするのでなんとなく個人に攻撃されるイメージはないと思ういます。でも副業になると、個人の名前で全部責任も批判も受けなければいけないので、そういったところは、会社員とは違うスリリングというか、しんどいところは多少あります。
堀口:「名前を出す/出さない」や、「顔を出す/出さない」は永遠の課題だと思います。本名や顔を出して行動すると自分に実績が蓄積する大きなメリットもありますが、もちろんリスクも伴います。会社の仕事は何かミスしたとしても会社の責任になるし、上司もいます。責任は上長が取ってくれるんですけども、副業だとダイレクトに自分の責任になります。その覚悟は絶対に必要かなと思いますね。
藤村:僕は複業でピンチにならないように予防線を張りまくっているので、トラブルはあまりありませんね。普段本業で会社員として勤めている仕事を100%とします。複業をはじめると、この100%にプラス、10%とか20%が積み重なる状態になります。要はリソース以上のことをやっている。その状態で、何かミスを起こす、複業や本業でも何かトラブルがあれば、一気に両方の信頼を失うわけですよね。複業をやっている時に、一番避けたいことはそれですよね。
副業を始めた人が直面する時間の壁
堀口:副業って100のうちの80:20ではなくて、100から110、120ぐらい頑張らないといけないので、時間がどうしても足りないんですよね。会社終わって家に帰るのが23時、寝る前の1時間活動する、あるいは早く起きて時間を作るしかないので、会社員時代が一番辛かったですね。副業する課題としても、時間がないっていうのはあると思いますね。その分、副業頑張りたいから、本業を頑張って早く終わらせようっていう気持ちにもなります。
藤村:自分の副業の時間を確保するために、他の時間のリソースを有効活用する感覚は大事だと思っています。本業において個人の生産性を高めるだけではなく、チーム全体の生産性を高めるように、自分の考えをシフトしたっていうのはありますね。
堀口:本業の業務を圧縮したとします。例えば100分かかっていた業務量を、60分で処理できるようになったとすると、空いた40分で新しい仕事を任せられるのってよくある話じゃないですか。優秀というか、効率のいい人ほどスケジュールが埋まっていって、結局100分がそのまま使われてしまう場合もよく見られます。そういう状況の改善って、サイボウズさんではなにかやっていたりしますか。
藤村:サイボウズの場合は、改善によって業務時間を短縮した分、自分の中でできる新しいことをやろうと考える人が多いですね。あと、私の考え方としては、個人のタスクだけでなく、チーム全体のタスクを見るようにしています。あなたの今の進捗も、これはチームの中でどれぐらいみたいな。できてなかったら、他の人がヘルプの手をあげるようになりますね。それは自分のタスクじゃなくて、チームのタスクだからです。
堀口:僕らは営業だったので。じゃあ、営業100%達成してますって言っても、まだ行けんだろって120%の仕事が振られる。そうするとまた、来期の目標が上がるっていうので、まぁエンドレスだったんですけどね笑。
藤村:いい意味で、期待値コントロールみたいなのは、必要なのかもしれないですね。