オンラインサロン「ギガ盛りブログ飯 ~発信力を身につけて時代を楽しく生きる術を教えます」の主宰者・染谷昌利さんが、新刊本『複業のトリセツ』を9月28日に発刊されました。それを記念して、本書内のインタビューにも登場する3名のゲスト、サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部 サイボウズ式編集長の藤村能光さん、株式会社ドリップ CEOの堀口英剛さん、同社COOの平岡雄太さんと共に「複業の今と未来」をテーマにしたトークセッションが開催。その様子を前編、中編、後編の3本に分けてお届けします。
複業(副業)のきっかけはリーマンショック?知人からの誘い?
司会:みなさんが複業(副業)を始めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
著者・染谷昌利さん(以下、染谷):お小遣いレベルでもいいのでちょっとでも副収入が入ればいいなと思って、ブログを始めたのがきっかけです。リーマンショックでほぼ会社が潰れかけた時に、ブログの方の収益は5万円くらいで、生活できるレベルじゃなかったんですね。ただ、早期退職で1年分の退職金がもらえたので、1年間頑張れば何とかなるかなって、結構軽い気持ちで始めました。
実際に1年後には生活できるレベルまでブログの収益は伸びていたのですが、当時はクリック課金型広告からの収入がほぼ100%でした。だけど、それだけだと危ないぞと思い始めて、広告がクリックされると収益になる仕組みだけでなく、物が売れたらその手数料をもらう仕組み(アフィリエイト)などと、収益を分散化させていきました。その後に、インターネットだけだと、万が一その広告がなくなった時に終わるぞと思って、人前で喋り始めたり、企業の広報のお手伝いをさせてもらって月額顧問料もらったり、ありがたいことに本の依頼が来たり、直近だとオンラインサロンを始めたりとか。自分の収益や、やることを分散化していく流れの中で、結果何をやっているのかわからなくなったのが、僕の複業の流れですね。
サイボウズ・藤村能光さん(以下、藤村):最初にいた会社で、一緒に仕事をしていた方からのお誘いがきっかけですね。私は今、サイボウズというITの会社におりまして、サイボウズには転職して入り、8年目です。ずっと会社員として仕事をしていて、独立したこともなければ起業もしたこともありません。仕事の中心は、メディア運営やコミュニケーション、ブランディングです。相手に対して自分たちの価値をうまく伝えていく仕事をずっとやり続けています。
ある日、最初の会社で一緒に仕事をしたことがある方から、新しくメディアを立ち上げたいと連絡がありました。戦略があり、それを実行できる現場力もあったのですが、その間をつなぐ人が不在でした。その間を生める役割を担う形でのお声がけを頂いたことから、複業が始まりました。
司会:元の会社の方からのお誘いという部分で、複業をする上では、会社の方針が重要だと思うんですけど、理解は得られていたということなんでしょうか。
藤村:そうですね。サイボウズは、「多様な個性を生かしてチームワークをよくしていく」と標榜しています。それは「自立して、自分なりの市場価値を高めて、会社に頼らなくても生きていけるようになってください」というメッセージです。サイボウズ自体も複業OKですし、複業としてサイボウズで働いてもらう採用方法も取り入れています。さまざまな価値観を持った100人100通りの人が集まって、チームを作った方が、イノベーティブという考え方をするんです。
僕も、自ずと会社に頼っているだけではダメだというようなマインドが高まり、市場価値を知りたいと思うようになりました。会社人間として仕事をするだけじゃダメだと。社会との繋がりを持った人間になっていきたいなと思うようになりました。会社の理解もありましたし、自分なりの生き方を模索している感じですかね。
副業を前提に本業のあり方を考える
司会:ドリップのお二人(堀口さん・平岡さん)は、就職時からブログをされていて、逆に会社に副業を認めてもらったところがあると思ったんですが。始められたきっかけは?
ドリップ・堀口英剛さん(以下、堀口):会社に入る前の大学生の頃から、ブログを運営してたんですね。僕の実家が埼玉の田舎町にありまして、大学までの通学時間が、だいたい2時間半くらいかけて通学してたんですが、通学だけで一日5時間あるんです。これ、本当に何かしないともったいないなと思って、そこで始めたのがブログです。一日5時間も費やしていれば、それなりに記事数が増えていくので、大学卒業するぐらいには、ブログで食べていけるくらいの収益が出てきたんですね。
そこで、就職どうしようかと考えた時に、選考時から「僕は副業としてブログをやりたいです」という話をずっとしていました。それを認めてくれる会社の中で探していたんですね。副業可だという会社が、そのうち3社くらい残りました。その三社は就職した大手インターネットポータル会社と、広告代理店系とコンサル系の会社がありました。三社を比べた時に、規定としては副業OKだけどポータル会社以外は「朝9時頃までに会社に出勤して、終電で帰って、土日も結構休日出勤あります」みたいなところだったんです。確かに副業はOKだったとしても、絶対、現実的にできないと思いました。その上で、副業もOKだし、そんなに本業が忙し過ぎないと感じたポータル会社を選びました。入社の時点で、僕は認めさせたというか、「副業前提で入らせてください」という承認を受けて入社したという感じですね。
ドリップ・平岡雄太さん(以下、平岡):僕が副業を始めたのは、堀口に出会ってからでして。私たちは同期入社なのですが、社会人になる数ヶ月前の同期会で「ブログやってるんです」と教えてもらって。もうその時、ブログっていうのは、芸能人がやることだと思っていましたし、ブログでお金が稼げるっていうのは全然わからなかったんですけど、なんか楽しそうだなと思って始めたのが、きっかけだったんですね。
堀口とは違って、趣味でブログをやってたので、副業の認識がないまま会社に入っています。徐々に収益が出てくると、会社に申請しなきゃいけないとか、色々手続きがあったんです。会社の中で上司や同僚の中でも、仕事で評価されないと、副業がOKだということにはならないと思うので、仕事で結果を出して上司の理解を得てから、同僚やクライアントに理解してもらう方が良いなと思っていました。実際、本業の方で評価してもらっていたので、副業もスムーズに認めていただきました。仕事もやりながら、応援していただいたという感じですね。
やってみたいと思ったら、一歩踏み出すことから
司会:副業のきっかけで最重要なところって、なんだと思いますか。会社の協力や、気づいたらそうなっていたなど…その点いかがですか。
堀口:よく聞かれる質問ですが、やっぱり一歩踏み出すきっかけは、実際に踏み出すしかないんですね。本当にやる人って、それを聞く前にもう始めてたりとか、少なくとも聞いてからすぐ、やる気になるんですね。やっぱりやっていない人って、聞いて終わってしまって、また2ヶ月後に「まだ悩んでるんだよね」みたいな話をするんです。
やってみないとわからないことって本当にたくさんあって。でもそれって本当にやらないとわからないんですね。なので、とりあえずちょっとでもこれいいなとか、やってみたいなと思ったら、まずはやってみるのが一番大事だと僕は思います。
藤村:会社員として仕事をしてきた人が、今年に入って本格的に副業を始めたケースの中で大事だと思うことは、まず本業をちゃんと頑張るということですね。自分の場合、もともとメディアにおりまして、そこで編集記者をやっていました。編集記者に限らずですが、特定のスキルだけでキャリアアップをしたり一番上に立つことって、結構難しいなという印象があります。周りを見渡すとすごい人がいることを知り、自分の軸は変えてみようと、サイボウズに入ったんですね。
サイボウズに入った時は、伝える仕事として、マーケティングコミュニケーションの担当になりました。そのうちに、会社でオウンドメディアをやることになりました。「なぜメディアの仕事を一度離れたのに、IT業界に入ってまたメディアをやるんだ」という思いもあったんですけれども(笑)。
サイボウズ式を立ち上げて6年くらいになって、本当にいろんな読者の方に記事を読んでいただいたり、サイボウズを知っていただけました。その中で、自分もメディアの編集長というわかりやすい役割ができ、コミュニケーションや伝える仕事、ブランディングという武器を持てたんです。その積み重ねがあって、今年から複業で声がかかるようになったという感じなんですよね。
会社の仕事を真剣に頑張る、丁寧に仕事をやり抜く、人のために頑張る。このあたりを突き詰めたおかげで、今になって複業のお話をいただけることが増えてきたんじゃないかなと思っています。しっかり本業をやってみるというところから、複業への道が見えてくるんじゃないかなと。
染谷:僕の中での最重要事項は二つあって、一つ目はエネルギーを出せるかどうか。エネルギーって、プラスもネガティブもあるけど、「面白そう、じゃあやってみよう」って思う好奇心も、「このままこの会社にいていいのか、何かやらなきゃ」というネガティブな不安も踏み出す一つのエネルギーだと思うんです。
二つ目が、キングコングの西野さんの書籍『革命のファンファーレ』で書いてあるので、すごく言いづらくなってしまったんですけど笑、副業をはじめるのに勇気なんていらないぞと思っていいます。必要なのは情報です。要は人って、知っている中からしか選択できないので、まず知ることがすごく重要です。おばけが出てくるポイントが分かっているお化け屋敷は怖くないですよね。それと一緒です。知識を得て怖くないって思ったら、一歩踏み出せるようになります。要は、プラス・マイナスのエネルギーを出すか、情報を手に入れて、一歩踏み出すのかのどっちかなんですけど。
堀口:その感覚、本当にありますね。周りに副業やっている人やフリーランスの人がいないと、すごい怖いなと思うんですけど。僕らの場合って、もともとそういう人たち…染谷さんみたいな方がいたので。前例があるから不安感がないというか、寧ろそっちの方にどんどん憧れが強くなっていって発信していると、反応もあって、自分も調べるようになって、っていうので人脈が広がる。そうすると、世界が広がるので。逆に会社の方が小さく見えてくるんですよね。