手軽に取り組めるダイエット方法として話題になった糖質制限。とくに多くの日本人が主食にしているご飯(白米)の糖質が気になっている方もいるのではないでしょうか。白米を野菜で代用したり、おかずだけを食べたりと、糖質制限中はご飯を避ける人も多いでしょう。
しかし、ご飯は本当に糖質が高いのでしょうか。また、ご飯で糖質制限をするときの注意点はあるのでしょうか。この記事では、お米の種類や食べ方別に、ご飯の糖質にまつわる知識を紹介します。
ご飯の栄養素や糖質
まずは一般的な白米を例に、ご飯の栄養素や糖質を見てみましょう。文部科学省の食品成分データベースによると、炊いたご飯(水稲めし/精白米)100gあたりに含まれる主な栄養素は以下の通りです。
炭水化物:37.1g
たんぱく質:2.5g
脂質:0.3g
カルシウム:3mg
鉄:0.1mg
亜鉛:0.6mg
食物繊維総量:1.5g
エネルギー:156kcal
(参考:文部科学省「食品成分データベース」)
上記からもわかるように、ご飯には体や脳を動かすときのエネルギー源となる炭水化物、体づくりに欠かせないたんぱく質や脂質など、多くの栄養素が含まれています。おかずや汁物として野菜や肉、魚などを追加すれば、よりバランスのいい食事になるはずです。
ご飯のグラム別栄養素も紹介しますので、自分が普段食べているご飯の量に近いものをチェックしてみましょう。
炊いたご飯80gの場合(一般的なご飯茶碗の半量程度)
炭水化物:29.7g
たんぱく質:2.0g
脂質:0.2g
カルシウム:2mg
鉄:0.1mg
亜鉛:0.5mg
食物繊維総量:1.2g
エネルギー:125kcal
炊いたご飯150gの場合(一般的なご飯茶碗1杯分)
炭水化物:55.7g
たんぱく質:3.8g
脂質:0.5g
カルシウム:5mg
鉄:0.2g
亜鉛:0.9mg
食物繊維総量:2.3g
エネルギー:234kcal
炊いたご飯250gの場合(一般的なご飯茶碗に大盛りでよそった量)
炭水化物:92.8g
たんぱく質:6.3g
脂質:0.8g
カルシウム:8mg
鉄:0.3mg
亜鉛:1.5mg
食物繊維総量:3.8g
エネルギー:390kcal
糖質の摂取量目安
1日あたりの糖質摂取量目安は、性別や年齢によって異なります。そもそも糖質とは、炭水化物からセルロースなどの食物繊維を除いた部分。そのため1日あたりの炭水化物摂取量目安より少し低い数値が、糖質の摂取量目安になるといえるでしょう。
炭水化物摂取量の目安は1日に必要なエネルギー量(kcal)の50~65%。炭水化物は1gあたり約4kcalなので、計算したエネルギー量をさらに4で割ると、炭水化物摂取量の目安がわかります。
座り仕事が中心で一般的な生活をしている人の場合、1日あたりの炭水化物摂取量目安は以下の通りです。
男性
18歳~29歳:331.25g~430.63g
30~49歳:337.5g~438.75g
50~64歳:325g~422.5g
65~74歳:300g~390g
75歳以上:262.5g~341.25g
女性
18歳~29歳:250g~325g
30~49歳:256.25g~333.13g
50~64歳:243.75g~316.88g
65~74歳:231.25g~300.63g
75歳以上:20.6.25g~268.13g
1日あたりの適切な糖質摂取量を考えるときは、上記の数値よりも少なめに見積もるといいでしょう。
また、食品表示基準によると炭水化物は必須項目となっていますが、糖質は任意、食物繊維は推奨表示です。食品を買うときに糖質の表示がなければ、炭水化物の数値を参考にしてみましょう。
糖質の計算方法
糖質の量は「炭水化物-食物繊維」で計算できます。
前述した炊いたご飯(水稲めし/精白米)100gの場合、炭水化物は37.1g、食物繊維総量は1.5gだったため、糖質は35.6gです。同じように計算すると、ご飯80gの場合は28.5g、150gの場合は53.4g、250gの場合は89gの糖質が含まれていることになります。
(参考:JAグループ福島 あぐり家の食卓│ご飯の栄養ってこんなにすごい!)
お米の種類や食べ方による栄養素の違い
お米の種類や食べ方によっても、摂取できる栄養素には違いが出ます。主な例を見てみましょう。
炊いたもち米100gの場合
炭水化物:43.9g
たんぱく質:3.5g
脂質:0.5g
カルシウム:2mg
鉄:0.1mg
亜鉛:0.8mg
食物繊維総量:0.4g
エネルギー:188kcal
炊いた玄米100gの場合
炭水化物:35.6g
たんぱく質:2.8g
脂質:1.0g
カルシウム:7mg
鉄:0.6mg
亜鉛:0.8mg
食物繊維総量:1.4g
エネルギー:152kcal
炊いた発芽玄米100gの場合
炭水化物:35.0g
たんぱく質:3.0g
脂質:1.4g
カルシウム:6mg
鉄:0.4mg
亜鉛:0.9mg
食物繊維総量:1.8g
エネルギー:161kcal
おにぎり(うるち米)100gの場合
炭水化物:39.4g
たんぱく質:2.7g
脂質:0.3g
カルシウム:3mg
鉄:0.1mg
亜鉛:0.6mg
食物繊維総量:0.4g
エネルギー:170kcal
玄米おかゆ(水稲全かゆ)100gの場合
炭水化物:15.2g
たんぱく質:1.2g
脂質:0.4g
カルシウム:3mg
鉄:0.2mg
亜鉛:0.3mg
食物繊維総量:0.6g
エネルギー:64kcal
精白米おかゆ(水稲全かゆ)100gの場合
炭水化物:15.7g
たんぱく質:1.1g
脂質:0.1g
カルシウム:1mg
鉄:微量(数値の記載なし)
亜鉛:0.3mg
食物繊維総量:0.1g
エネルギー:65kcal
きのこ入り雑炊100gの場合
炭水化物:25.53g
たんぱく質:4.59g
脂質:1.61g
カルシウム:12.78mg
鉄:0.43mg
亜鉛:0.66mg
食物繊維総量:0.6g
エネルギー:139kcal
(参考:カロリーSlism)
上記から、玄米や発芽玄米は食物繊維総量が多い分、もち米よりも糖質が低い食材だとわかります。また、おかゆのように水分の多い料理は100gあたりに含まれる米の量が減るため、炭水化物や糖質の量も控えめになる傾向が見られました。
その他炭水化物との糖質比較
ご飯は炭水化物を多く含んでいることがわかりましたが、ほかの主食はどうなっているのでしょうか。ラーメンやパスタなど、日本人もよく食べている主食の糖質を、以下の表で確認してみましょう。
(参考:文部科学省「食品成分データベース」)
炊いたご飯100gあたりの糖質は35.6gだったため、パンと比べるとそれほど高いとはいえません。一方でラーメン、うどん、そば、そうめん、パスタといった麺類は、ご飯よりも糖質が低いことがわかります。
ご飯以外の主食の糖質については以下の記事でも詳しく紹介しているので、チェックしてみてください。
糖質制限のしすぎに注意
ダイエットをしている人からは厄介に思われがちな糖質ですが、生きるために欠かせない栄養素のひとつ。無理に糖質を制限するとエネルギーが足りなくなって疲れを感じたり、筋肉量が減少したりといったデメリットがあります。
とくにご飯にも多く含まれるブドウ糖は、脳にとっては唯一のエネルギー源。糖質の摂取量を減らしすぎると集中力の低下を招くおそれもあります。
一方で、糖質制限ダイエットに取り組むことで、一定の成果が出ることも否定できません。ただし「ご飯を食べないようにしよう」と極端な行動をとるのではなく、適度に糖質やそのほかの栄養素を摂取したほうがいいと考えられています。体調を崩すほか、主食を減らしすぎてお腹が空いた分、脂っこいおかずを多く食べてリバウンドをしてしまう場合もあるためです。
そもそも、糖質を摂取すると太ってしまうのは、適切な量以上に食べてしまっているから。どれだけ身体にいい栄養素でも、過剰摂取は逆効果となってしまいます。前述した1日辺りの糖質摂取量目安を参考に、必要な栄養素はしっかり取り入れ、過剰になっている分を見直してみてはいかがでしょうか。
また、ご飯に含まれる主な糖質は「多糖類」という種類で、体内に吸収されるまでに比較的時間がかかります。そのため単糖類と比べると、血糖値の上昇がゆるやかです。ご飯のなかでもとくに玄米は低GI食品として認められており、食後の血糖値が上がりにくいといえます。GIとは糖質の吸収度合いを示した数値のことで、値が低ければ糖がゆっくり吸収されると考えられています。
なぜ血糖値の上昇スピードは、ダイエットや健康面で重視されているのでしょうか。
血糖値が急激に上がると、すい臓からインスリンという成分が多く分泌されます。インスリンは血液中の糖分を細胞に取り込む働きを持っている一方で、余分な糖分から脂肪を合成することも。さらに脂肪の分解を抑制する作用も持っています。糖質を摂取しすぎるとインスリンが蓄積する脂肪の量も多くなり、結果的に太ってしまうのです。血糖値の急激な上昇を抑えインスリンの分泌量を減らすためにも、玄米のような低GI食品が重宝されています。
ただし、いくら血糖値の上昇がゆるやかな食品でも、急に食べ過ぎては意味がありません。ご飯はよく噛んで、ゆっくり時間をかけて食べる習慣をつければ太りにくくなると考えられています。さらに腹持ちがいいため、食事後の満足感も充分です。
毎食おにぎり1個とおかずを食べる、いつもは大盛りご飯を食べていたけれど普通盛りにしてみるなど、無理せずにできる方法はいくつもあります。自分に合ったやり方を見つけ、実践してみることが大切だといえるでしょう。
(参考:glico│糖質制限ダイエットってなに?そのメリット、注意点とは?)
まとめ
ご飯は糖質を多く含む食べ物ですが、生きるために必要な栄養素もたくさん詰まっています。食パンなどと比べると糖質は少ないため、糖質制限をしている人も極端に避ける必要はないといえるでしょう。もし糖質制限ダイエットをする場合、ご飯の摂取量をゼロにするのではなく、茶碗に盛る量を控えめにするなど、無理のない範囲で取り組んでみてはいかがでしょうか。