健康診断などで血圧を測った際に、高血圧や低血圧を指摘されたことがある人もいるでしょう。
血圧は身体の健康状態を表す指標のひとつですが、平均値や正常値とかけ離れていても気づかない場合があります。とくに高血圧は自覚症状が少ないため、気づいたときには心臓などの病気に発展している可能性も。この記事では、血圧の平均値と正常値、高血圧や低血圧の改善方法などを詳しく解説していきます。血圧を正しく理解し、健康の維持に役立ててみましょう。
血圧とは
血圧とは、血流が血管の壁を押す圧力のこと。
人間の体内では、心臓から送り出された血液が血管を通って全身を循環し、また心臓に戻ってきます。この働きの中で、血圧には、血液が流れやすいように血管を押し広げる役目があるのです。
血圧は、「心拍出量」と呼ばれる心拍数1回あたりの血液量や、血管の弾力性、血液の状態などさまざまな要因によって変化します。そのため、健康な人でも一日を通して血圧は一定ではなく、とくに朝と就寝時は低い数値になると考えられています。
(参考:OmROn│血圧とは)
上の血圧・下の血圧とは
上の血圧・下の血圧は、血圧測定をした際にわかる最高血圧と最低血圧を示す数値のこと。また、同時に身体の健康状態を判断するヒントのひとつにもなっています。
上の血圧は収縮期血圧とも呼ばれ、心臓が収縮しているときの血圧のことです。心臓が全身に血液を送り出している状態で、血管かかる圧力は最も大きくなります。
反対に、下の血圧は拡張期血圧とも呼ばれ、その名の通り心臓が拡張しているときの数値です。次に送る血液をためている状態で、血管にかかる圧力は最も小さくなります。
平均血圧とは
平均血圧とは、上の血圧(最高血圧)と下の血圧(最低血圧)から導き出される数値であり、以下の数式に当てはめて計算できます。
平均血圧=最低血圧+(最高血圧-最低血圧)÷3[mmHg]
「mmHg」は「水銀柱ミリメートル」と読み、血圧を示す単位です。また、「最高血圧-最低血圧」は脈圧とも呼ばれ、値が大きくなるほど血管が硬いことを表しています。
平均血圧の基準値は、成人男性の場合90〜110mmHg、成人女性の場合80〜110mmHg。平均血圧が基準値よりも高いと、動脈硬化に発展しやすくなると考えられています。
血圧の測り方
血圧は、医療機関のほか、家庭でも簡単に測定することができます。ここではデジタル式の家庭用血圧計を使った測り方を見ていきましょう。
家庭で血圧測定をするときのポイントは、リラックスした状態で行うこと。椅子などに座って1~2分程度安静にし、心身を落ち着かせましょう。このとき両足は組まずに足の裏が床についた状態にします。
次に、血圧計を取り付けます。血圧計の機種にもよりますが、上腕部など心臓と同じくらいの高さに装着するのが一般的です。もし高さが合わない場合は、腕の下にタオルなどを置いて調整してください。あとは取扱説明書の指示に従って血圧計電源を入れ、血圧の測定を行います。
血圧を測定する際は、数値を比較しやすいように、毎日同じ時間に同じ条件で測定するようにしましょう。起床後は1時間以内、排尿を済ませてから測定することが推奨されています。服薬や食事は血圧測定後に行い、就寝前は測定の1時間以上前に入浴などを済ませておくようにすると、より正確に血圧を測定することができます。
【年齢別・男女別】血圧の平均値
血圧の平均は年齢や性別によって異なります。ここでは、厚生労働省による「令和元年国民健康・栄養調査」(※)をもとに、最高血圧・最低血圧・平均血圧の平均値を見ていきましょう。
(※参考:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」)
20代の血圧平均値
20代男性の最高血圧は115.9 mmHg、最低血圧は68.1 mmHg、平均血圧は約84.0 mmHgです。
20代女性の場合、最高血圧は105.7 mmHg、最低血圧は63.8 mmHg、平均血圧は約77.8 mmHgです。
30代の血圧平均値
30代男性の最高血圧は117.2 mmHg、最低血圧は73.8 mmHg、平均血圧は約88.3 mmHgです。
30代女性の場合、最高血圧は108.0 mmHg、最低血圧は66.4 mmHg、平均血圧は約80.3 mmHgです。
40代の血圧平均値
40代男性の最高血圧は125.4 mmHg、最低血圧は80.6 mmHg、平均血圧は約95.5 mmHgです。
40代女性の場合、最高血圧は113.7 mmHg、最低血圧は70.9 mmHg、平均血圧は約85.2 mmHgです。
50代の血圧平均値
50代男性の最高血圧は129.7 mmHg、最低血圧は81.0 mmHg、平均血圧は約97.2 mmHgです。
50代女性の場合、最高血圧は121.8 mmHg、最低血圧は74.5 mmHg、平均血圧は約90.3 mmHgです。
60代の血圧平均値
60代男性の最高血圧は134.1 mmHg、最低血圧は78.3 mmHg、平均血圧は約96.9 mmHgです。
60代女性の場合、最高血圧は130.6 mmHg、最低血圧は76.7 mmHg、平均血圧は約94.7 mmHgです。
このように、最高血圧・最低血圧・平均血圧は年齢とともに上昇傾向にあるとわかります。また、女性よりも男性の方が血圧の平均値が高くなっています。
中学生や高校生など、10代の血圧は上記の「令和元年国民健康・栄養調査」では調査対象となっていないため、全国的な統計資料はありません。
一方で、第二次性徴期に起こりやすい「起立性調節障害」を原因とする低血圧によって、立ちくらみやめまい、動機、息切れといった体調の不良を訴える10代も多くいます。また、10代でも肥満体型が原因で高血圧を発症するケースもあり、東京都立小児総合医療センター(※)では、「最高血圧120以上かつ最低血圧80以上」を持続的に満たした場合、高血圧の可能性があるとみなしています。体調に不安を感じたら迷わず病院に相談しましょう。
(※参考:東京都立小児総合医療センター)
血圧の正常値
高血圧や低血圧という言葉はよく聞きますが、具体的な数値の基準はどうなっているのでしょうか。血圧の基準値を確認してみましょう。
高血圧の基準値
最大血圧が140mmHg以上、もしくは最低血圧が90mmHg以上の場合は高血圧と診断される可能性があります。なお、この数値は病院の診察室で計測した場合であり、家庭で血圧測定をするときは各基準を5mmHg下げて判断します。
低血圧の基準値
一般的には、最高血圧が110mmHg以下かつ、頭痛やめまい、吐き気など体調不良を継続的に感じている場合は低血圧の疑いがあるとされています。症状が改善されない場合は、医師に相談してみてもいいでしょう。
また、低血圧には国際的な診断基準値が存在しないため、日本国内の病院では最高血圧が100mmHg以下の場合を低血圧と診断する場合もあります。
高血圧を改善しよう
高血圧は喫煙と並んで、日本人の生活習慣病リスク要因ともいわれており、放置しておくと動脈硬化などの症状に発展する場合もあります。危険な高血圧の原因や症状、改善方法を確認してみましょう。
高血圧になる原因
高血圧の主な原因は、塩分の過剰摂取や運動不足、飲酒、ストレスなど。また、肥満体系の人も高血圧になる可能性が高いと考えられています。
高血圧による症状
高血圧になると、動脈硬化、心不全といった心臓や血管系の病気にかかりやすくなるといわれています。しかし、高血圧の自覚症状はほとんどないため、定期的な血圧測定が大切です。
高血圧の改善方法
高血圧の改善方法として代表的なものが食生活の見直しです。塩やしょうゆなどをいつもより少し減らして薄味の料理を作る、外食やテイクアウトの頻度を抑えるなど、普段の食生活を見直して食塩摂取量を減らす工夫から始めてみましょう。
また、カルシウムを摂取すると血圧が安定しやすくなると考えられているため、牛乳や乳製品などを意識的して食事に取り入れてみるのもおすすめです。ほかにも、適度な運動や肥満の改善、禁酒・禁煙といった行動も高血圧改善につながります。
高血圧がなかなか治らない場合は、医師に相談して降圧治療に取り組んでみましょう。
低血圧を改善しよう
前述したように、低血圧には明確な診断基準こそないものの、頭痛やめまいなどで生活に悪影響を及ぼす場合があります。原因や改善方法などを知り、毎日の生活を見直してみましょう。
低血圧になる原因
低血圧の原因にはいくつかのタイプがあり、最も多いのは、「本態性低血圧」と呼ばれるタイプです。体質や遺伝が原因になっていると考えられていますが、詳しい原因はわかっていません。
また、普段の血圧は正常値であるものの、椅子やベッドから立ち上がったときに低血圧が起こる場合もあります。これは、「起立性低血圧」と呼ばれるタイプで、血圧を調整している自律神経が異常をきたすことによって、低血圧になってしまうのです。
このほか、「症候性低血圧」と呼ばれるタイプは、心筋の病気や糖尿病など、何らかの病気が原因となって低血圧を引き起こすと考えられています。
さらに、健康な人であっても、疲れや食生活の乱れが原因で、同様の症状が起こる可能性があるため、十分注意してください。
低血圧による症状
低血圧になると、疲れやすくなる、倦怠感を覚える、めまいや頭痛、耳鳴り、不眠、吐き気などさまざまな症状があり、ひどい場合は失神することもあるようです。
低血圧の改善方法
食生活の見直しは低血圧の改善方法としても重要です。低血圧の人は朝起きられずに朝食を抜いてしまうなど食生活が乱れている人が多いため、まずは1日3食規則正しく食べることから目指しましょう。
また、食事にはたんぱく質やミネラルを意識的に取り入れ、血圧を上げるために塩分も適度に摂取してください。
アルコールは血管を広げる作用があるため、血圧が低下する原因になってしまいます。とくに血液中にアルコールが残っているときは起立性低血圧を起こしやすくなるため、飲酒は控えましょう。
また、早寝早起きを意識することやウォーキングなどの軽い運動も、血液の循環をよくして低血圧を改善する効果が期待できます。
血圧測定は家庭で手軽に健康状態をチェックすることができる手段のひとつ。とくに自覚症状の少ない高血圧の早期発見に役立ちます。また、毎朝体調がすぐれない場合も血圧測定で低血圧だと判断できれば、低血圧を改善することによって症状を改善できるかもしれません。平均的な血圧や基準値と比較して、自分の健康に気を配ってみてはいかがでしょうか。